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図書館員の棚から3冊(第90回)(2017/07/28)

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図書館員の本棚拝見!
このコーナーでは、あなたの町の図書館員が本や雑誌、漫画を御紹介します。
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■第90回目は 下田市立図書館 鈴木 美鈴 さん です。■

 歴史や民俗学の研究書や評論ばかり並ぶ、私の書棚に自由闊達で色鮮やかな本たちがやってきたのは、図書館員なってからのことである。

 それまでの私は、絵本など興味はなかった。絵本は子どもが読むものと決め込んでいた。しかしどうだろう、簡潔な言葉と、絵が、互いに補完しつつ生み出される豊かなイメージ、どことなく窮屈でつまらなく感じてしまう日常に風穴をあけてくれる発想力の豊かさ、疲れ切った心を癒してくれる懐かしさ・・・何かはわからないが、大きくて、生き生きとした何かが、そこにはあふれている。絵本が書棚にあるだけで、なんだか幸せな気分になるのである。

 今回は、そんな私の書棚からとっておきの3冊を紹介したい。


 ぼくのおじいちゃんのかお    
    (天野祐吉/文 沼田早苗/写真 福音館書店 1986年

 往年の名優、加藤嘉氏の表情豊かな顔写真で作られた写真絵本である。そこに天野祐吉氏のユーモラスでありながら、老人という存在の本質を突いた軽妙洒脱な文章が添えられている。笑ってしまうけど、じんとくる絵本なのである。

 例えば、「おじいちゃんは、よく ごはんをこぼしてしかられる。」「わざと きこえないふりしてる。」「あ ねてら。」思わず、くすくす笑ってしまう。

 でも、「おじいちゃんは、ときどき とおくをみている。」「ないているとき もある。」ユーモラスでありながら、じんときてしまう。

 老人は、単に老いた人ではない。現実に、間近に迫る死を見つめながらも、翁童感覚のような、老の中に幼の心が宿ったような、不思議な自由さを持つ存在なのである。


2 『さるのひとりごと
     (松谷みよ子/文 司修/絵 童心社 2000年) 


 不思議な民話絵本である。孤独を愛するといいながら、孤独に耐えられない。誰かにいてほしいけれど、干渉されたくない。でもいてほしい。現代人が誰しも持つ、不条理な孤独感を、猿を主人公として展開される心理劇なのである。

 山での集団生活に嫌気がさしたのか、追い出されたのか、ひとりの猿が海辺へやってくる。松の木に昇って独り言を言っていると、誰かが返事をする。猿は「なんで かってに へんじした」と言って、返事をした蟹を石でつぶしてしまう。

 しかし、返事がなくなると、今度は寂しくなって、つぶした蟹を団子にして岩に据える。するとまた団子が「うん」と返事をする。猿はうれしくなって「またくるから へんじしてな」と言って山に帰っていく。

 不条理劇を見ているような不思議なストーリなのだが、なぜか心にすとんとくる。私が孤独を募らせつつ、必死に現代を生きているからなのか?

 左のページに、猿の目に映った海や、地平線、蟹などの風景や場面が抽象的に美しく描かれ、右のページの下のほうには、猿の様子が白黒の漫画風に描かれている。読む人は、おのずと、自らが猿になって絵本の中の心理劇を体験する仕掛けである。しかも語りは、「むかしが あったげな」と民話なのである。まったく不思議で、素敵な民話絵本なのである。



3 『しあわせの石のスープ
    (ジョン・J・ミュース/さく・え 三木卓/やく フレーベル館 2005年

 「石のスープって何だろう?」「石からスープができるのか?」「それでもって、どうして幸せなのか?」そんな好奇心から手に取った絵本である。

 度重なる災害や戦争で、お互いを信じられなくなった村を、3人の僧が訪れる。僧たちがしたことは、石のスープを作ること。初め無関心だった村人も、おいしいスープにするために、食材や調味料を持ち寄り、結果として、コクのあるおいしいスープが出来上がる。それをみんなで味わい、本当のしあわせとは、分かち合うことで生まれることを知るというストーリである。

 初めは、心を閉ざし意地悪そうな村人の顔が、最後には満面の笑顔で満たされていくのが心地いい。

 少子高齢化、人口減少、財政難など、自治体の存亡の危機に直面している私たちにとって、「石のスープ」のような素敵な仕掛けづくりができたら本望である。



 次回は 静岡県立中央図書館 青木 俊明 さん です。


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