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図書館員の棚から3冊(第77回)(2017/01/13)


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図書館員の棚から3冊(第77回)(2017/01/13)

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図書館員の本棚拝見!
このコーナーでは、あなたの町の図書館員が本や雑誌、漫画を御紹介します。
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■第77回目は 浜松市立浜北図書館 鈴木 早苗 さん です。■

1 『100万回生きたねこ』(佐野洋子/文・絵 講談社 1977年)
 100万回死んで、100万回生きたねこ。100万人の人がかわいがり、100万人の人が泣きました。ねこは 1回も泣きません。誰かのねこだった時、ねこは死ぬのなんか平気だったのです。ところがある時、ねこは誰のねこでもありませんでした。
 誰かのねこだった時は死ぬ事も平気だったのが、白ねこと出会い家族となったとき、自分よりも家族が大事であり、いつまでも一緒に生きたいと願うようになります。ねこは誰かのために生きる意味を知りました。しかし、白ねこの死によって初めて死の悲しみを味わいます。自分なりに生ききることが大切なのだと知ったのです。
 絵本でありながらも、死ぬ事と生きる事をテーマにしたこの作品。何となく生きるのも、誰かのために生きるのも人それぞれですが、自分ならどう生きるのだろうと考えさせられます。大人にも子どもにも何かが必ず伝わるのではないかと思います。


2 『モモ 時間どろぼうとぬすまれた時間を人間にかえしてくれた女の子のふしぎな物語』(ミヒャエル・エンデ/作・絵 大島かおり/訳 岩波書店 1976年)
  大きな都会の南にある小さな円形劇場の廃墟、そこに少し奇妙な格好の女の子が住みつきました。この不思議な女の子に、大人も子どもも会いに来ます。なぜか誰もがモモといると楽しいのです。ある日、この平和な町に灰色の紳士が現れます。「人間から生きる時間をむしりとる、我々が奪ってしまう、こっちのために使う。君たち人間ときたら自分たちの時間の何たるかを知らない!」知らないうちに時間を取られてしまった人間は、心の余裕が無くなり、思いやりをなくし、日々忙しくなり、時間の無駄をなくそうとします。人間らしさを失っていき、子どもから遊びを奪い取り、灰色の四角いビルを建て、無駄を一切省くようになって行きます。そして、疲れ果てて希望もなく働きます。モモは、かめのカシオペイアと共に、灰色の紳士が人間から奪った時間を取り戻しに行きます。
 モモの物語は、現代の私たちの時代そのものだと痛感します。時間の大切さは、分かっていてもどうにもならない時があります。しかし、時間を使う事は命を使う事と同じです。自分の時間をどう使うのか、その積み重ねがその人の一生となると思うと、いい加減ではいけないのではないかと思います。忙しさに追われてしまって、心の余裕が持てなくなっている時にこそ、是非読んでみてほしい1冊です。


3 『 ライオンと魔女(ナルニア国ものがたり(1))
(C.S.ルイス/作 ポーリン・ベインズ/絵 瀬田貞二/訳 岩波書店 1966年)
 戦乱を避けて地方の古い屋敷にやってきた4人きょうだい。ある日、大きな衣装だんすに入ると、そこは雪の降り積もる別世界のナルニア国でした。子どもたちは不思議なライオン・アスランに導かれて、ナルニア国を支配する白い魔女たちから住人たちを開放するための戦いを始めます。
 妖精の国への入り口が普通の衣装だんす。奥へ奥へと進むのになぜか行き止まりにならない…。靴が雪を感じたとき目の前に信じられない光景が広がります。このシーンは何かが始まる予感がして、ドキドキ、ワクワクします。そして、期待を裏切らない、息もつかせぬ4人の子どもたちの冒険が始まります。
  ナルニア国へは子どもしか行くことができません。大人になると、衣装だんすはただの衣装だんすになってしまうのです。純真な心の子どもでないと行けないナルニア国の物語。映画にもなりましたが、ぜひ原作を全巻読まれることをおすすめします。


                  次回は 伊豆の国市立中央図書館の皆さん です。


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