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図書館員の棚から3冊(第65回)(2016/06/24)


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図書館員の棚から3冊(第65回)(2016/06/24)

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図書館員の本棚拝見!
このコーナーでは、あなたの町の図書館員が本や雑誌、漫画を御紹介します。
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■第65回目は 静岡県立中央図書館 梶 弘幸 さん です。■

 静岡県立中央図書館 企画係の梶です。
 当館では、作家や学者の方々をお招きして、講演会を年に数回開催しています。当館がお招きした(する)講師の著作の中から、私が持っている本を紹介いたします。
 

1 『鹿男あをによし』 (万城目学 幻冬舎文庫 2010年)

 ある日突然、大学の研究室を出され、奈良県の女子高に教員として赴任することからストーリーが始まります。序盤は夏目漱石の「坊っちゃん」のような雰囲気ですが、鹿に話しかけられる(雌鹿なのにハスキーな中年男の声で話しかけてくるのです)あたりから、怪しい世界に足を踏み入れていきます。
 作品の舞台は、古都の奈良と京都。遺跡や寺社が登場し、いにしえの発掘品が重要なアイテムとして使われることで、あり得ない世界なのに不思議な説得力があります。登場人物の背景も徐々に描かれていき、作品終盤に向けて物語が収束していく様は鮮やかです。淡い恋愛模様も物語に彩りを添え、ラストシーンは印象に残りました。
 当館では、万城目学さんをお招きして、10月に講演会を開催する予定です。多くの方に楽しんでいただきたいですし、私自身も大いに楽しみにしています。
 

2 『単純な脳、複雑な「私」』 (池谷裕二 講談社ブルーバックス 2013年)

 東京大学薬学部教授の池谷裕二さんが、母校の静岡県立藤枝東高等学校で行った全校講演と連続講義を、丸ごと収めた一冊です。本人が「いま一番思い入れがあって、そして、一番好きな本」と記した、充実の内容となっています。最新の脳科学から「心」を読み解くことで、常識が何度も覆され、驚きの連続でした。
 あとがきには、専門家が一般向けの平易な講演を行う「アウトリーチ活動」について言及がありました。研究者は研究に専念すべきとの声もある中で、池谷さんがアウトリーチ活動を行う理由として「母校愛」を挙げていらっしゃいます。藤枝東高校で連続講義を受けたうちの一人は、東京大学で池谷教授と再会し、また全校講演を聴いたうちの一人は、同じ実験室で一緒に脳科学の研究に従事しているそうです。このメルマガの読者の中にも、受講生として本書に登場した生徒がいらっしゃるかもしれませんね。
 当館では、平成2711月に池谷裕二さんの講演会を開催し、大変な人気を博しました。
 

3 『カエルの楽園』 (百田尚樹 新潮社 2016年)

 百田尚樹さんの著作で私が持っているのは、最新刊の「カエルの楽園」です。平和で理想的な暮らしを享受している民族が、異種族の脅威にさらされていく様子を、第三者の目線から描いた寓話です。登場人物はほぼ全てカエルです。話はシビアな方向に展開しますが、挿絵には百田さんが描いたユーモラスなカエルたちが使われていて、少しだけ癒やされました。
 著名なベストセラー作家の百田尚樹さんですが、平成2411月に当館がお招きして、講演をしていただいたことがあります。当時は「海賊とよばれた男」が発刊された後で、同作が本屋大賞を受賞する前のことでした。私が当館に着任する前のことなので、残念ながらお目にかかることはできませんでした。
 表題は「五十歳を越えて作家になるということ」で、テレビ番組の放送作家として仕事をしていた頃のエピソードや、作家を志すようになったきっかけ、デビュー作「永遠の0」、その他著作について語っていただきました。同じものをやりたくない、できるだけ自分の可能性に挑戦したいという思いから、毎回異なるジャンルに挑戦されているようです。



      次回は 静岡県立中央図書館 小塩 真弓 さん です。 


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