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図書館員の棚から3冊(第62回)(2016/05/13)


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図書館員の棚から3冊(第62回)(2016/05/13)

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図書館員の本棚拝見!
このコーナーでは、あなたの町の図書館員が本や雑誌、漫画を御紹介します。
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■第62回目は 静岡県男女共同参画センター図書室 松永 真希 さん です。■

 私の勤務している静岡県男女共同参画センター図書室は、男女共同参画・女性問題の専門図書室です。
 専門図書室というと専門書ばかりという印象があるかもしれまんせんが、コミックや絵本のような手にとりやすいものも所蔵しているんですよ。
 そこで、あざれあ図書室の所蔵しているコミックを3点ご紹介します。


1 『おひとり様のふたり暮らし』
  (スタジオクゥ ひよさ&うにさ∥著、イースト・プレス、2015年)

 老後は誰と暮らすか。パートナーと暮らす人、子どもたちと暮らす人、あるいはパートナーと別れおひとり様の人、ずっとおひとり様の人たちもいるかもしれませんね。その他の選択肢の一つとして、アラフォーのふたりの生活はヒントになるのではないでしょうか。
 本書の著者は女性ふたりのコンビでイラストレーターをしている「ひよさ」と「うにさ」。同じ美大を卒業し、ふたりで仕事を始めて数年後、より良い住居と家賃との兼ね合いからルームシェアすることを決めます。ごはんはそれぞれ食べたいときに作る、大きな買い物は共同で、友人を呼ぶときは初回はふたり揃っている時に招く、のようなルールや親とのことなどを日常の様子とともに紹介しているコミックエッセイです。
 家族とも違う友人だからこそある距離感。その距離感が居心地が良さそうで、こんな暮らし方もいいかもしれない、と思えてきます。
 

2 『ペコロスの母に会いに行く』 (岡野雄一∥著、西日本新聞社、2012年)

 皆さんは映画化された作品は原作から読む派ですか。それとも映画を観た後に原作を読む派でしょうか。
 本書は映画化されているコミックエッセイ。著者の母は夫が他界した後から、認知症の症状が出始め、やがてグループホームへ入所します。認知症となった母は、過去へと戻り弟妹たちの子守りをし、時には亡くなった友人と再会し、酒をやめてから穏やかになった亡き夫と、ホームを抜け出してランタンを観にでかけたりします。過去と現在、生と死が混じりあう中を生きている母。こんなふうに懐かしい人々と会うことができるのならば、老いることは、それほど怖いことではないのかもしれません。
 認知症となり、いろいろなものを降ろしていく母へ、著者からの温かな眼差しが感じられる本です。

 

3 『ボーイ★スカート』 (鳥野しの∥著、祥伝社、2015年)

 ある日スカートを穿いた男性を見かけた高校生の桃井太一は、同じようにスカートを穿いて登校します。スカートは没収、つきあっていた先輩からは距離を置かれてしまいます。
 女装がしたかったわけでもなく、男性に恋をしたわけでもなく、かっこいいと思ったからスカートを穿いて歩いてみたかった、とクラスメイトの一人へ話す太一。
 スカートを穿き続ける姿に、戸惑っていた周囲も次第に受け入れていきます。
 太一がスカートを穿くことから、親やクラスメイトは性同一性障害ではないのか、異性装ではないのか、とデリケートな問題扱い。ただのファッションとして楽しんでいるのに、男性がスカートを穿くのにはセクシュアリティに関わる理由がないといけない、と思っているようです。そこにあるのは「男性はこうあるべき」という考え方だけではなく、女性なのか男性なのか、セクシュアリティのわからない人への戸惑いもあるように思います。
 自分の中の性へのとらえ方について考えるきっかけになるかも、なお話です。



   次回は 沼津市立図書館 松澤 ユカリ さん です。 


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