パンくずリスト:このページは ホーム »の下の メールマガジン »の下の 2012年 »の下の リレーエッセー »の下の リレーエッセー(第181回) です

リレーエッセー(第181回)


現在位置:HOMEの中のメールマガジンからリレーエッセー(第181回)

リレーエッセー(第181回)

「こんな図書館にしたい」「私の出会った図書館員」「心に残るこの1冊」など、図書館員の“おもい”をリレー形式で紹介していきます。

■第181回目は 伊豆市立修善寺図書館 秋山 泰子 さんです。


  池田晶子さんの「14歳の君へ」という本があります。時々、中学生の読み聞かせに使うのですが、作者は子どもたちに「嫌いなものは嫌いだ。これはもうどうしようもない。」と語ります。此処で、みんな「えっ!いいの?そんなこと言って!人を嫌いになるのはいけないことじゃないの?」と心配そうに私を見ます。緊張感が走ります。「だって、ピーマン嫌いなの無理やり好きって無理があるよね。」ここで持ってきたピーマンを見せながらみんなの顔色を眺めます。うなずいていいのか、いけないのか、困ったような顔。そして「嫌いなものは嫌いだ。これはもうどうしようもない。そして嫌いなものはそこにある。これもどうしようもない。だから存在は認めてあげよう!そしてそれ以上こだわらないこと。これが「愛」というものなんだ。」と作者の言葉を伝えます。「ピーマンさん、私はあなたが嫌いだけど、存在は認めるよ。」そう云われると、気持ちが少しずつ楽になっていきます。緊張していたみんなの顔も心なしか緩みます。

 私は、今のいじめは子どもの社会が昔のように作られてこなかったからだと時々思ってしまいます。

 昔はけんかしても仲直りを繰り返して大人になっていきました。けんかしても相手の存在は認めていました。

 今は自分の感情ばかりが優先してしまいます。自分の嫌いなものというか、感覚的に除外したいものは認めない、いるだけでうざい、だからどうなってもいい。それが正しいという論理。でも相手を認めることを覚えれば、嫌いでも付き合えるとこの本は教えてくれます。相手の存在を認めて付き合っていく。どうやって?それには、自分だけの人生では味わえない、いろんな人の気持ちを知ることだと思います。

 おはなしおばさんとして全国を駆け回る藤田浩子さんは、以前伊豆市の講演会で「小さい頃、読み聞かせをしてもらって育った子どもは、心の奥底にその物語のいろんな登場人物の気持ちを蓄えていく。そして大人になってつらいことや苦しいことがあったとき、その擬似体験がきっと役にたってくれる。」とおっしゃっていました。ブックスタート、おはなし会、そしてひとり読みへ…図書館の存在が子どもたちの心をゆっくりゆっくりと耕すきっかけづくりの場所になれたらいいなと思う今日この頃です。

         次回は 伊豆市立修善寺図書館 井岡 智美 さんです。

 

リレーエッセイへ戻る