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リレーエッセー(第170回)


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リレーエッセー(第170回)

「こんな図書館にしたい」「私の出会った図書館員」「心に残るこの1冊」など、図書館員の“おもい”をリレー形式で紹介していきます。

■第170回目は 静岡県立中央図書館 杉田 万里子 さん です。


 私の勤務する図書館では、週3日、開館時間の前後に書架点検をしている。
順番に見ていくので、いつも同じ場所を点検するとは限らない。この間、9類の棚を点検している時にふと「小説の個人全集は第1巻の貸出率が高い」ことに気づいた。もちろん、利用者からすれば読みたい作品の入っている巻を借りるのは当然なのだが、ある作家の作品を縦覧しようと思うと、やはり第1巻から……ということになるのだろう。  
 私個人の読書傾向からすれば、特定の作家の作品を続けて読むことはめったにない。が、かつて、ある作家のシリーズをすべて読んだという経験がある。しかも、私にとって初づくしのことだった。 
 小学校4年生の時、テレビ番組「兼高かおる世界の旅」でプリンスエドワード島を紹介していたのを見た。映像で見たその世界に惹かれ、自分のお小遣いで初めて買ったのがモンゴメリ『赤毛のアン』(新潮文庫)だった。学校からの帰り道、バスに揺られながら少しずつ読んだ。このシリーズは文庫で10巻あり、最後の『アンの娘リラ』までは(お小遣いの具合もあり)なかなかたどり着かなかったが、中学1年生の途中で読み終わったように記憶している。当時、先生になりたかったので、アンと自分を重ねて読んでいた。後に、図書装備(本にビニールのようなフィルムを貼る)実習で、初めて挑戦したのもこの『赤毛のアン』だった。フィルムコートした本を手にして感慨深かったのを覚えている。今でも書棚には古ぼけた新潮文庫が並んでいるが、30数年前このシリーズに出会わなかったら、今の私はなかったかもしれないなぁ、とつくづく思う。 

 次回は 静岡県男女共同参画センターあざれあ図書室 菊川真紀子  さん です。
   

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