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HOME > 館長室から> ―館長のひとりごと― 平成30年_15


平成31年1月10日


                ヘロドトスのエジプト見聞 (5)

 ヘロドトスによるギザの三大ピラミッドとその王についての言及は、多くの書籍やネット上での紹介がありますが、いまなお観る者を圧倒するエジプト文明の象徴であり、古代の七不思議(景観)の一つでもありますので、やはり触れないわけにはいきません。

 ・・本書を通じて私の取っている建前は、それぞれの人の語るところを私の聞いたままに記すことにあるのである。
 ・・・エジプトではランプシニトス王の時代までは、申し分のない政治が行なわれ、エジプトの国は大いに栄えたが、彼ののちにエジプト王となったケオプス(※クフ)は、国民を世にも悲惨な状態に陥れた、と祭司たちは語っていた。・・・エジプト全国民を強制的に自分のために働かせたという。アラビアの山中にある石切場から石をナイルまで運搬する役を負わされた者もあれば、船で河を越え対岸に運ばれた石を受け取り、いわゆるリビア山脈まで曳いてゆく仕事を命ぜられた者たちもあった。常に十万人もの人間が、三カ月交替で労役に服したのである。・・・ピラミッド自体の建造には二十年を要したという。ピラミッドは(基底が)方形を成し、各辺の長さは八プレトロン(※1プレトロン:29.6m)、高さもそれと同じで、磨いた石をピッチリと継ぎ合わせて造ってあり、どの石も三十フィート以下のものはない。
・・・ケオプスの悪業は限りを知らず、果ては金に窮して己の娘を娼家に出し、なにがしかの金子の調達を命ずることまで敢えてしたという。娘は父に命ぜられた額の金を調達したが、娘は自分のためにも何か記念になるものを後世に残したいと考え、自分の許へ登楼してくる客の一人一人に、自分のための工事用の石を一個ずつ寄進してくれと頼んだという。祭司たちの話では、大ピラミッドの前面にある三基のピラミッドの中央のものは、こうした石で造られたものであるという。

 この後、もう二つのピラミッドに関連し、カフラー王、メンカウラー王についての記述が続きます。ギザの三大ピラミッドといわれますが、この王たちの悪政、善政については、ヘロドトスの報告以外にも、さまざな解釈があるようです。
 なお、好奇心旺盛なヘロドトスなら当然触れるであろう、人頭獅子身像のスフィンクス(※1)について、彼は一切言及していません。藤縄氏は、すでに当時、ギザのスフィンクスは砂に埋もれていたものと思われる、と述べています。この一枚岩(石灰岩)からなる巨大像について、彼がその彫像からはじまって、当時のエジプト人から聞き取ったさまざまな伝承・伝説を記述し、さらにまた、自信たっぷりに、興味深い自説を開陳してくれていたら、と思うと残念です。

 最初に触れましたようにヘロドトスの歴史は、万事このように、今でいう厳密な意味での史料批判抜きで、見聞した事柄を基本として歴史を物語っていくスタイルなので、その叙述方法には当時から賛否両論がありました。おおよそ一世代下の、科学的歴史の祖といわれるトゥキディディスは、アテネとスパルタの対立を中心としたペロポネソス戦争記述の冒頭で、ヘロドトスの名前こそだしていませんが、批判的なコメントを書くところから始めています。見方によっては、自分の足場をどうするか決める模範があったから、別の形式を生むことができたともいえるわけですが。
 もちろんヘロドトスには、そのようなことを考える暇もなく、自らの興味関心にしたがって冒頭に書いた出発点から、ゴールまで貫徹したわけで、生涯をかけたその成果は、完成から2千年以上経過したいまも、多くの読者の興味関心を惹きつけてやみません。
そのメインテーマであるペルシア戦争については、また触れたいと思います。

※1 
 但し、ギザとは別の箇所でスフィンクスについての言及はあります。
 なお、ご存じの方も多いと思いますが、ギリシア神話に有名な話があります。以下の引用は、シュリーマン(1)で参考文献に挙げた ブルフィンチ 「ギリシア・ローマ神話 付インド・北欧神話」(野上 弥生子 訳)岩波文庫 1982から。
「・・・テーバイの町はある怪物のためにその公道を荒らされました。それはスピンクスと呼ばれる怪物で、獅子の身体をして、上半身が女でありました。それが岩の頂上にうずくまっていて、通りがかりの旅人たちをみんなさし止め、一つの謎をかけて、その謎の解けた者は無事に通すが、解けないものは殺される、という約束をさせるのでありました。謎は誰にも解けないで、みんな殺されてしまいました。オイディプスはそれを聞いても平気で、大胆にも自分から試しに行きました。『朝には四足、昼には二足、夕べには三足となって歩行する物は何だ。』オイディプスは答えました。『それは人間だ。人間は子供の時は両手と両膝ではって歩く。壮年には真直ぐに立って歩く。老年には一本の杖の助けをかりて歩く。』スピンクスは自分の謎の解かれたのを不面目に思い、岩から身を投げて死にました。」
 この文中のオイディプスは、ジグムント・フロイトの提唱したエディプスコンプレックス概念でも使われた人物です。


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