左上枠画像
名著・貴重書/洋書と明治初期の翻訳書
デジタル葵文庫 葵文庫サイトマップ 右上画像

 

(1)法律書 1

 洋書の中には法律書が多く、その中には当時のヨーロッパやアメリカの最高水準のものが含まれている。難解なため、幕府が読んだ形跡はないが、緊迫した国際情勢の中で、欧米諸国の法律に対する幕府の関心の高さがうかがえる。明治になると、政府や民間で様々な法律書の翻訳がおこなわれた。

AE236
Henry Wheaton
“Elements of International Law ”8th ed. London, 1866.
(ヘンリー・ホイートン『国際法原理』第8版 1866年 ロンドン)1冊[初版は1836年]
印記:静岡学校
国際法原理タイトルページ
タイトルページ

 アメリカのホイートン(1785-1848)は、判事や外交官として活躍した人である。『国際法原理』は、国際法に関する著作の中で最高のランクに位置づけられ、不朽の名著として多くの版を重ねた。江戸幕府旧蔵のこの本は、ダナ版といわれる第8版である。
 ダナ版とは、ダナ(Richard Henry Dana)(1815-82)がホイートンの没後に編集したものである。この出版にあたっては、第6版、第7版の編集・出版者との間で、15年に及ぶ裁判が繰り広げられた。ダナは悲運のうちにローマで客死したが、ダナによる豊富な新しい「注」によって、この版が最も権威あるものとして認められるようになった。
 この「ダナ版」はアメリカ南北戦争(1861-65)の際に起きた奴隷問題やトレント号事件(1861)など新しい問題が豊富に出てきた時期であった。(1)
 ところで、ダナ版が出版された1866年は、日本では慶応2年にあたる。その翌年幕府は崩壊しているので、当館所蔵本は出版されてまもなく幕府に入ったものと思われる。

<参考文献>
    (1)(329-159)松隈清『国際法史の群像』 酒井書店  1992 年 p.321-358.

 
左下枠画像
前ページへ
次ページへ
下枠画像
右下枠画像