江戸後期・明治初期の歴史/資料解説
葵文庫

 

AN-284
[J.Covens en C.Mortier:Nieuwe Atlas Inhoudende de Vier Gedeeltens der
Waereld.2dln.Amsterdam.
コヴァン・モルチール 「世界新地図帳」アムステルダム 刊年未詳  2冊本 印記:蕃書調所? 静岡学校]

 上巻に90枚、下巻に88枚の銅版画による世界各地の地図を収録したもので、18世紀のヨーロッパに流布していた地図を集めたものと思われる。

 この中の日本図は、ケンペルの「日本誌」(1727)のオランダ語版(1740)のものと同じ図である。左上にはカムチャッカが本州北端まで南に延びて異様である。さらに右隣の図は、本州北端と蝦夷の南端部分の図で、「新撰大日本図鑑」(延宝6年 1678)によったものと思われる。

 近藤守重(重蔵)の「辺要分界図考」(文化元年 1804)中の「第一蛮人モルチイル所編図」および、山田聯の「北裔図説集覧」(ほくえいずせいしゅうらん)(文化8年 1811)中の「蘭人モルチール著書所見蝦夷図」は、この地図帳の亜細亜図によったものらしい。

 なお、地図上には、和訳地名を墨書した金紙銀紙が貼付されているが、本木良永が「阿蘭陀全世界地図書訳」(寛政2年 1790)を著作した時のものである。

外観
アトラスの図
外観

アトラスの図

世界図

ヨーロッパ図
世界図

ヨーロッパ図

アジア図
日本図
アジア図

日本図


<参考文献>

    290.3-107「阿蘭陀全世界地図書訳」本木良永 寛政2年(1790)
    「コヴァン・モルチール共編『世界地図帳』と本木良永訳述『阿蘭陀全世界地図書訳』」
     山本正(SZ01-3『葵』18号)
    「亜欧堂田善製作の銅版画と阿蘭陀版『全世界新地図帖』の銅版画」(上)(下)
     菅野陽(Z70-1 『美術研究』 329号、330号)