江戸後期・明治初期の歴史/資料解説
葵文庫

 

092-1-11
林子平「三国通覧図説(写本)」

天明5年(1785)成稿、翌6年刊行。
 朝鮮、琉球、蝦夷地の三国、及び無人島(小笠原諸島)、さらに日本とそれらの地域との里程を示す総図を5図載せ、国防的観点からそれら四地域の地理や風俗について解説したものである。特に、ロシアの東方政策について述べ、その勢力がカムチャッカから千島に及んでいることを指摘し、蝦夷地侵略の危険を警告している。そして、蝦夷人に教化政策を施すことや、蝦夷地を本土並に開発することにより、ロシアの侵略政策に対抗し得ると主張した。北海道の北方に「サガリイン」を描いているが、名称を伴ってこの島を紹介したわが国最初の地図である。なお、カラフトは「嶋」という字が付けられているにもかかわらず、大陸の一部となっているが、大陸から突き出た半島とするカラフト半島説は本書に起因する。

<参考文献>

    「カラフト半島説とサガリイン半島説」 皆川新作 (Z28-1『傳記』
    10巻3号 1943年)
    291.03-ウン 「地図に見る日本 ―倭国・ジパング・大日本―」海野一隆 1999年 大修館書店

三国通覧図説 表紙
 
三国通覧図説 日本を中心とした地図
表紙
日本を中心とした地図