静岡県立中央図書館には、蕃書調所(ばんしょしらべしょ)、開成所さらには昌平坂学問所(しょうへいざかがくもんしょ)、箱館奉行所(はこだてぶぎょうしょ)など江戸幕府の公的な機関の旧蔵書が特殊コレクション「葵文庫」として収蔵されている。

葵文庫収蔵本の流れ

 これらの蔵書は、江戸幕府の崩壊とそれに続く徳川氏(家達〜いえさと〜)の駿府移封(慶応4年8月)を機に、開成所や語学伝習所さらには昌平坂学問所の教授陣とともに当地にもたらされた。徳川(静岡)藩では、これらの蔵書や教授陣をもとに府中学問所(駿府学校)を設立して子弟の教育に当たり、国学や漢学のほか洋学も開講され、外国文化の摂取につとめた。

 しかしながら、明治5年の学制頒布(はんぷ)により静岡学問所は廃校となり、蔵書は静岡県庁へ引き渡されたが、その際払い下げられたり、流出したものもあったようである。
 以後、これらの蔵書は静岡師範学校、静岡県立葵文庫へと順次受け継がれ、現在に至っている。

 このコレクションは、「静岡文庫」という名称で呼ばれていたが、昭和45年(1970)4月、静岡県立中央図書館として現在地に新築移転したのを機会に、本来図書館名であった「葵文庫」という名称が使われるようになった。

<参考文献>
瀧嘉三郎「葵文庫の貴重書」(SZ37-3「文化と教育」148号)
SZ01-1「葵」(静岡県立中央図書館報)14号 葵文庫の40年・蔵書の解説「静岡文庫」の項
SZ01-3「葵」5号(創立50周年記念)「資料 の紹介」の項
平野日出雄「葵文庫・江戸幕府旧蔵洋書成立の背景」(「葵」14号)
SZ01-3「葵」30号(創立70周年記念号)「研究発表」「温故知新」の項
石田徳行「静岡県立中央図書館蔵・江戸幕府旧蔵書(所謂葵文庫)考」(SZ20-1「地方史静岡」5号)
松田清「府中学問所の『和蘭書目』」(Z04-35「日蘭学会会誌」12-2,1988.3)

 
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