「こんな図書館にしたい」「私の出会った図書館員」「心に残るこの1冊」
など、図書館員の“おもい”をリレー形式で紹介していきます。
■第101回目 菅藤 悦子 さん(三島市立図書館中郷分館)
爽やかな風の中、周りの田んぼは田植えの準備を始め、今年も燕が飛び交う
時季となりました。三島市立図書館中郷分館は、郊外にあり、四季折々の変化
を感じることができる、地域の図書館で、公民館と併設されています。
毎週水曜日午後4時から、4歳くらいの子どもたちを対象に、絵本、紙芝居
の読み聞かせ、なぞなぞを行う「おはなし会」を開催しています。毎回楽しみ
に参加してくれる子どもや、友だちを連れてきて参加してくれる子どもたちも
いて、参加者同士の輪が広がる会となっています。また、おはなし会に子ども
たちが参加している間、お母さんたちのコミュニケーションの場ともなってい
ます。
地域にある施設という特徴から、公民館で行っている活動に参加した際に、
図書館を利用していく人たちが多いので、より身近に感じてもらうために、夏
休みには、子どもたち向けのイベントを公民館と共催で開催する計画を立てて
います。
これからも、図書館職員と公民館職員が協力し合いながら、地域の拠点とし
て、人と人の出会いや、人と本との出会いを応援していきたいです。
■第102回目 林 由香 さん(裾野市民文化センター図書室)
私が図書館の仕事とは別に、小学校の朝の読み聞かせボランティアを始めて
9年が経ちます。図書館のおはなし会の時もそうですが、毎回、選書に悩みま
す。1学級の児童の中には、本が苦手という子もいて、自分の選んだ本が一人
一人の心にどう届いているかを思うと責任重大です。ただ、一日の始まりの大
切な15分間に少しでも子どもたちの心が元気になればと、笑顔になれる絵本
を必ず一冊は選んできました。
最近、好評なのは幼児絵本の「わにわにのおふろ」です。山口マオさんの描
くぶっきらぼうなわにがとても魅力的。1年から6年までどの学年で読んでも
必ず笑みがこぼれます。
ここ裾野市民文化センター図書室で開催されるおはなし会でも、ボランティ
アのみなさんが毎回魅力あふれる絵本を読んでくださっています。時には、参
加者が親子一組ということもありますが、一人の子どものために読んであげる
ことがとても大事に思えます。子どもに良書との出会いをつくるのに近道はな
くて、人から人への手作りの活動しかないことを改めて実感しています。
窓を開けると、黄瀬川のせせらぎ、鳥のさえずりがさわやかな風を運んでく
れ、狭いながらも落ち着いた空間となっています。皆さんも一度、裾野市民文
化センターの小さな図書室におはなしを聞きに来てください。
■第103回目 長田 哲広 さん(御殿場市立図書館)
当館では月に2回「親子おはなしの会」を開催し、職員による絵本や紙芝居の
読み聞かせの場を提供しています。平日の開催ということもあって、参加して
くれるのは乳幼児を連れたお母さんたちが目立ちます。
私にも9ヶ月になる娘がいて、日頃、私のつたない絵本の読み聞かせに付き
合ってもらっています。親子おはなしの会の当番の時には、上手に読んであげ
ることはできなくても、娘が目の前にいるつもりで、やさしく、丁寧に、リズ
ムよく読むことを心がけています。
これまで子どもたちの反応がよかった絵本は、愛子さまもお気に入りだった
という、ふくだとしおさんの「うしろにいるのだあれ」のシリーズです。子ど
もたちもおとなしく聞いているだけでなく、積極的に参加できるような絵本も
好きなんだなと思います。
乳幼児期は本との出会いの時であると言われます。図書館に来る多くの子ど
もたちが様々な本に触れ合い、本と共に健やかに成長していくための手助けが
少しでもできることを願いながら、日々の業務に取り組んでいます。
■第104回目 渡辺 知也 さん(沼津市立図書館)
私は子どものころから本が好きでした。好きといっても子ども向けにある物
語や小説ではなく、道路地図や日本地図、世界地図といった実用的な「地図」
が好きでよく読んで(というよりも見て)いました。
ある日、本屋で母から「好きな本買ってあげるから持っておいで」と言われ、
地図をもっていったところ、地図以外の本でと条件が付き、選んできた本は星
座が載っている天体図の本でした。母はまた同じようなものをという感じで呆
れていましたが・・・。
そんな幼少期でしたので、社会・理科・数学は得意でしたが、国語や英語と
いった語学系の教科は苦手で、夏休みの宿題にある読書感想文などは毎年悪戦
苦闘していました。
仕事をする上で、稟議や企画書、予算要求時の資料などの文章を作成しなけ
ればならないとき、自分の表現方法やボキャブラリの少なさを実感すると、た
くさん本を読んでおいたほうが良いと言われてきたのはこういうことだったの
かと、今頃になってようやく解ってきたような気がします。
図書館に社会科見学にくる子どもたちから、「どんな本を読んだらいいです
か?」と質問されたとき、「課題図書以外にも、映画やテレビのドラマなどを
観る前に原作の本を読んでみてください」と答えています。
図書館に配属されてから4年目を迎えましたが、自身のYA期の読書量の少な
さを補えるよう、いろいろな本の世界にふれることができればいいなと思う今
日この頃です。
■第105回目 大庭 紀二 さん(磐田市立福田図書館長)
1冊の本との出会いで、私は「治らぬ病」を楽しむ身となった。きっかけは、
もうずいぶん前のこととなるのだが、書店でその書名に惹かれて1冊の本を手
にしたことから始まった。
昭和49年に新潮社より「古美術拾遺亦楽」という奇妙な題名の本が出版さ
れた。著者は詩人であり、また蕪村と芭蕉の評論で知られる安東次男である。
「芸術新潮」に連載したものをまとめたものだが、毎月五万円渡され好きな骨
董を買ってその解説を書く、という企画だ。
骨董の本もずいぶんと数多く出版されているが、買った値段をはっきりと書
いてあるものはめったにない。買値をはっきりさせてしまうと、今度は売ると
きに困るからだろうか。自分が何か買うときの参考になるかもしれない。なぜ
かそう思ってしまい、四千五百円という値段、かなり無理をして買った。
34点の骨董が取り上げられている。正統派の骨董から「へーこういう物も
ありなのか」と思わせるものまで。文章のリズムがいいので引き込まれるよう
に読んでしまったが、当時の知識では理解できない部分が相当にあった。何度
もくり返し読み、さらに自分でも骨董を買うようになり、骨董屋さんとも顔な
じみになるにつれ、書かれていることの意味が解ってきた。これがきっかけで
骨董買いの病にとりつかれ30年以上が経ってしまった。
この病、お医者様でも家族の怖い顔でも治りはしない。
図書館にはたくさんの資料がある。図書館が、自分の世界を広げてくれる本
と出会う場となることを願いつつ、日々の業務に励んでいる。
■第106回目 後藤 章 さん(磐田市立竜洋図書館長)
私は、歴史が好きで、そのなかでも戦国時代以降の歴史の本や、時代小説を
乱読している関係で城に大変興味をもっている。
日本には、数多くの城(天守閣)があるが、その多くは戦後再建されたもの
である。私がすでに訪ねた城、または訪ねたいと思っている城は、江戸時代か
ら現在も存続している「現存12城」である。この12城の中には、世界遺産
に登録されている姫路城(国宝指定)や国宝に指定されている松本城・犬山城・
彦根城の4城と、弘前城・丸岡城・備中松山城・松江城・丸亀城・伊予国松山
城・宇和島城・高知城である。このうち訪ねたのは5城であるが、残りの城に
ついてもなるべく早い機会に訪ねてみたいと思っている。
城の遠景も、それぞれに風格がある。石垣の下に立ち、天守閣を眺め、それ
から急な階段を登ると、その時代の建築技術に驚かされるとともに、天守閣の
望楼を一周し、周囲の景色を眺めると大名の気分を味わえる。
今も、古写真が掲載された本を眺めながら、この原稿を書いている。これか
ら12城のファイルを作り、訪ねた城の資料で埋めるようにすれば計画倒れせ
ずにすむかもしれない。
「国盗りの夢」が破れぬようにしたい。
■第107回目 小久江 暁子 さん(袋井市立袋井図書館)
私は5年間図書館に勤務した後、別の部署で10年間勤務し、3年前にまた
図書館に戻ってきました。10年ひと昔といいますが、戻ってきてびっくりし
たことがあります。
まず、お客様が増え、カウンターで受ける相談が多様化したこと。10年の
ブランクは大きく、カウンターで他の職員の助けを求める日々を過ごしていま
す。
そして、インターネットが普及し、出版情報などが簡単に調べられるように
なったこと。“おうだんくん”も導入され、県内図書館の蔵書が瞬時に分かる
ようになるなど、とても便利になっていました。以前は、県内図書館にFAXを
送って蔵書を確認したり、冊子目録で一生懸命調べたりしていた記憶がありま
す。
でも、変わらないものもありました。10年前も利用してくださっていたお
客様の懐かしいお顔を拝見したときは、本当にうれしく感じました。このとき
の気持ちを忘れずに、世の中がいろいろ変化しても、ずっと愛され利用され続
ける図書館であってほしいと願い、日々の仕事をしていきたいと思っています。
■第108回目 長島 昭子 さん(西伊豆町立図書館)
沖縄出身の私が子供だった頃、今帰仁村には図書館もなく、本屋さんといえ
ばバスで20〜30分はかかる場所にありました。あの頃、周りの家庭でも兄
弟姉妹5人は普通で、一番上の私は特におこづかいが欲しいとは言えず、本を
買うことはできませんでした。
本を身近に感じたのは、小学校中学年になってからのことでした。学校に図
書室が置かれるようになり、私の叔母が図書係として働くようになったので、
毎日のように通い、本が大好きな子に変身しました。今、懐かしく思い出すの
は、「小公女」や「江戸川乱歩シリーズ」を夢中で読んだこと、そして「塩狩
峠」を一晩で読んでしまったことです。あの頃の、「大きくなったら図書館で
働けたらいいな」という思いが、いつの間にか現実となり、生まれ育った地と
同じような村(賀茂村)の図書室で働けるようになり(現在は西伊豆町)、多
くの本に囲まれ幸せです。
小さな町なので、お客様とも親密さがあり、「調子はどうですか?」と気軽
に挨拶したり、「こんな本が入りました。」と本をおすすめしたり、なかには
お客様ご自身が本の感想を話してくれたりと、こじんまりとした良さがありま
す。特に、70代くらいのご夫婦を見かけるとほほえましく、私もそんな風に
なりたいと思ったりもします。小さな図書館ではありますが、本好きな子が増
えることと、また来たいと思えるあたたかい図書館を目指して頑張ります。
■第109回目 高橋 はるみ さん(小山町立図書館)
私が勤務する小山町立図書館は、総合文化会館内にある小さな図書館です。
インターネット環境も充実していないので、利用者の方々にはご不便をおかけ
していますが、それでも、町民に愛される図書館を目指し、日々奮闘中です。
9月の初めに図書館システムの入替え作業があり、しばらく休館することに
なったので、連日書架整理をしました。夏休み後ということもあり、かなり乱
れていましたが少しずつ整理をしていきました。最初はやる気充分!で他の職
員と書架の前に立ちましたが、2日目にもなると、普段の運動不足がたたり、
体のあちらこちらがギシギシ、ガタガタ音を立てていました。それでも、少し
ずつきれいになっていく書架を見つめ、頑張るぞ!と自分を励まし、なんとか
館内整理は終了しました。整理をしながら本を手にとっていると、(ああ、こ
の本だいぶくたびれたな。)とか(こんな本がここにあったのか。)など、蔵
書を見直す良い機会になりました。そして、きれいになった書架を見つめ、職
員皆で達成感を味わいました。
開館してから、お客様が「見やすくなりましたね。」と声をかけてくださり、
心の中で思わず(やったぁ!!)とガッツポーズをしてしまいました。書架整
理は地味な作業ですが、とても大切な業務です。これからもコツコツと頑張っ
ていきたいと思います。
■第110回目 倉田 和徳 さん(浜松市立引佐図書館館長)
引佐町は、戦国期からの徳川政権による江戸幕府の礎となり、幕末に起こっ
た「桜田門外の変」で水戸藩士により、命を落とすこととなった井伊直弼など
の「井伊氏」発祥の地としてもよく知られています。町内においては、井伊家
の菩提寺である龍潭寺や、関連する奥山方広寺などの多くの史跡が存在し、町
を訪れる人を楽しませています。
さて、夏休み企画展としまして、小学生が調べた自由研究の成果と「軽便鉄
道」に関する資料を7月25日から8月9日まで展示をいたしました。これは、
遠州鉄道奥山線(開通当時は浜松軽便鉄道)の調査を独自に読けた市立井伊谷
小年生の風間音奈さんの研究資料を並べて、図書館の資料や地域住民の声を基
に、写真や地図も数多く載せた冊子を完成させました。企画展では、風間さん
が調べた全28駅の情報を披露したほか、大正時代の各駅の様子をとらえた写
真なども公開しました。
地元新聞に企画展内容が掲載されたこともあり、期間中は内容照会の依頼を
受けたり、町内の方々はもとより町外の方々も来館されたりと、大変な賑わい
でした。来館者は展示内容が懐かしくもあり、当時の時代を鮮明に覚えていて
満足して帰宅されたようでした。
図書館では、各種講座として「親と子の読書講座」・「ブックスタート」・
「中学生ボランティアの受け入れ」などを開催しています。今後も来館者が心
豊かで楽しい時間を過ごせていただけるような図書館ととなるよう努力し、職
員一同で皆様の来館をお待ちしております。