「こんな図書館にしたい」「私の出会った図書館員」「心に残るこの1冊」 など、図書館員の“おもい”をリレー形式で紹介していきます。


■第91回目  村岡 泰行 さん(菊川市立図書館菊川文庫)

 菊川文庫では、ブックスタートやおはなし会を図書館員が交替で行っていま す。私も、一昨年より参加するようになりました。
 おはなし会は、ブックスタート(7ヶ月児対象)に参加してくれた子どもが 徐々に来てくれるようになって、多いときは20組以上参加してくれることも あり大盛況です。まず、動物のぬいぐるみを使って、子どもたち1人ずつに挨 拶するところから始めます。続いて、手遊び・絵本の読み聞かせ・手作り工作 の順で会を進めていきます。小さな子どもが対象になるので、初めはどんな風 にしたら受け入れてもらえるだろうか、また、どうしたら心が通じ合えるかと ても心配でした。そんな時は、わが子に絵本を読み聞かせた頃を思い出して、 絵本を子どもたちの目線に合せて読むようにしました。また、“子どもが絵本 を好きになるには、まず読み手を好きになってもらうことだ”という言葉を忘 れないよう心掛けています。工作なら作ったものを持ち帰って遊べるようなも のを、手遊びなら親子が一緒に楽しめるものを、読み聞かせなら子どもの興味 をそそる絵本を探す、といった工夫をしています。
 こうした工夫が功を奏し、お話に引き込まれた子どもたちが、私の読み聞か せを聞いて音まねをしてくれたときは、本当にうれしかったです。そして、気 がついたら一緒に本を楽しんでいる自分がいました。
 菊川文庫は、これからも子どもに“絵本は楽しい!! ”と感じてもらえるよう な機会をどんどん作っていけたらと思っています。今後も、絵本を通して、子ど もたちの心と身体が豊かに育ってもらえるよう願っています。


■第92回目  鈴木 優子 さん(菊川市立小笠図書館)

 中学2年生の冬、幼稚園での体験学習に臨んだ私が選んだのは紙芝居の読み 聞かせでした。
 読書は大好きでしたが、それまで人に向かってお話を読んだことはなかった 私。張り切って読み始めたのはいいのですが、次第に不安になってきました。 画面に隠れて見えない向こう側からは何の反応も返ってこないように思えたか らです。
 つまらないのか飽きたのか‥確かめようと顔を上げた私の目に飛び込んでき たのは、こちらを見つめる何十という強い目線と、真剣そのものの子どもたち の表情でした。その息苦しい程の集中力に呑まれ、思わずどこまで読んでいた のか忘れてしまうほどでした。
 あれから十数年。本と人との間に立つ仕事に就く私がいます。「この仕事を 選んだ理由は?」と聞かれたとき、まず浮かんでくるのがこの出来事です。喜 ばれる仕事ができているか、これでいいのかと悩むとき、いつもあの目に見つ められている気がします。物語の持つ力をたくさんの子どもたちと楽しむこと ができるよう、また、読書はもちろん、調べ物や地域の情報提供など、お客様 が充実した時間を過ごすのに図書館が少しでも役立てるよう、これからも努力 を続けていきたいと思います。


■第93回目  原田 徹夫 さん(森町立図書館長)

 森町には6つの幼稚園があり、310余名の園児が通っている。規模も100名以 上の園もあれば、小規模な園もある。各園が年間5〜7回の訪問計画を立てて くれ、図書館での読書活動を指導してくれている。平成19年度の利用状況は、 延べ1472名であり、年間の利用者の3.6パーセントを占めている。近年入館者数 が減少傾向を示している当図書館としては、この割合はとても驚くべき数字で あるし、我々への励ましの数字でもある。
 各幼稚園とも園経営の柱の1つに「読書指導の普及」を掲げて、年少・年中・ 年長の3年間を通して実践してくれているのは、今後の森町の青少年の健全な 発育のために大きな貢献をしていると思う。園児たちの図書館での様子を見て いると感心する場面に多く出会うが、我々職員の背筋をピシッとさせてくれる のは、借りるときの「貸してください。」「ありがとうございます。」のあい さつである。借りた本をていねいにバッグに入れる姿には、我々も自然に「あ りがとう、また来てね。」の言葉を返す。日ごろの園での基本的生活習慣指導 の充実を感じる。
 また、読みたい絵本の選択についても訪問回数が増えるたび、学年が上がる ごとに「スピード」が増すことにも感心させられる。ソファーで借りた本を見 せ合いながら友達に本の紹介をしている姿はとても貴重な場面だと思う。


■第94回目  齋藤 明子 さん(長泉町民図書館)

 図書館で働き始めて8年、数年前からヤングアダルト分野の選書をしていま す。利用者だった頃、ヤングアダルト(YA)というコーナーの名前に抵抗が あり、利用したことがありませんでした。しかし、成り立ちや言葉の意味を知 り、参考資料を調べるうちに、選書のしがいがあるコーナーだとわかりました。 イメージだけで近寄らなかったことを反省し、また同じ思いの方がいるかもし れないと考え、説明を表示し、星型シールを貼り、コーナーの印象を分かりや すくことから始めました。その成果があってか、現在は、YA世代だけでなく、 大人の方にも利用していただいています。
 最近、横書きや今までと違う印象の表紙など、新しい本の形が登場していま す。赤木かん子さんの本によると、若い人たちが本に興味を持ち手に取るため に、とても重要なことだそうです。変化していく世の中の流れを受け入れ、た くさんの利用者の方に立ち寄って貰えるようなコーナー作りを心掛けていきた いです。


■第95回目  神戸 美紀 さん(清水町立図書館)

 清水町では、平成13年度に「読書習慣づくり」モデル地区として県より指 定を受け、読み聞かせを中心とした事業に取り組んできました。平成14年度 からは、事業を発展させるべくブックスタート事業を開始しました。保健セン ターで行われる1歳6ヶ月検診時に、図書館職員と読み聞かせボランティアも 参加し、肌のぬくもりを感じながらことばと心を通わすきっかけを作るように と、地域に生まれた赤ちゃんに絵本の手渡しをしています。絵本を入れる袋に は、清水町出身の児童作家・宮西達也さんにオリジナルの絵と言葉を描いてい ただきました。図書館・保健センター・読み聞かせボランティア・郷土の先輩 である児童作家など、さまざまな分野や立場の人たちが連携をとりながら赤ちゃ んの幸せを願っています。
 開始当時は、言葉の分からない赤ちゃんに絵本を読むことに驚いていたお母 さんが多かったのですが、今では上のお子さんのときにもらってうれしかった とか、読み聞かせを始めているなどとお話しされることが多くなりました。ブッ クスタート会場や図書館の中で、子どもに読み聞かせをしてあげているお父さ んも多く見られるようになりました。家庭・学校・地域の中で子どもたちの読 書環境が広まるように、これからも読書推進に取り組んでいきたいと思います。


■第96回目  切池 香代子 さん(新居町立図書館)

 図書館に異動して、もうすぐ1年になろうとしています。実は、今から20 数年前、図書館の開館時に携わっていたことがあり、感慨深いものがあります。 当時は隣に紡績工場がありましたが、今はニュータウンとして開発され、モダ ンな街並みとなりました。しかし、木の床と高い天井、木立に囲まれた図書館 はそのままです。
 書架を眺めると、新しい作家の顔ぶれが多く、本の返却にしばしば戸惑いま したが、絵本作家ターシャや児童文学作家上条さなえさんの事もこの図書館で 初めて知りました。
 ターシャ・テューダーは、『西の魔女が死んだ』(梨木香歩著)のおばあちゃ んを連想してしまうのですが、自然や手作りのぬくもりを大切にしたその生涯 は、理想のおばあちゃんの姿です。しかし、最近コンビニ通いが増えてしまっ た私では、いくらあこがれてみても足元にも及びません。また、女性版「ホー ムレス中学生」とも言える上条さんの、少女時代の逆境にめげない体験談は、 勇気を与えてくれるものでした。自立した女性たちのたくましい生き方を知り、 親としての役割も考えさせられました。
 我が家では、この春、卒業式と入学式が2回ずつあります。遠く離れていく 娘を送り出す日もまもなくです。図書館の桜並木も、もうしばらくすると私た ちの目を楽しませてくれるはずです。あわただしいながらも、桜前線のたより を待つこのごろです。


■第97回目  仁科 佳子 さん(藤枝市立駅南図書館)

 この度、2月に“BiVi藤枝”という商業施設の中に、藤枝市立駅南図書 館が開館しました。今まで藤枝市は岡出山という場所に1館のみの図書館でし たが、今年1月、旧岡部町と合併し、旧岡部町の図書館と岡出山図書館、駅南 図書館の3館となりました。新図書館を開館して早2週間、予想を上回る利用 者数を記録し、嬉しい悲鳴をあげています。
 昨年7月にシステムを更新し、自動貸出機が利用できるようになったので、 駅南図書館でも、できる限り利用者の方々には自動貸出機をご案内しています。 本を置くだけで書名等を読み取ってしまう機械に、皆さん「すごーい!」と感 動しきり。小さなお子さんなどは、嬉々として貸出機を使っています。
 また、新施設は3階のフロア全部が図書館となっています。広くなった分、 利用者の方々も歩くのが大変であるのと、資料を探すのに一苦労されているよ うです。職員も、ご案内に走り!?(歩き)まわっています。開館したばかりで、 利用者の方々に温かく見守っていただいておりますが、まだ、棚などは貸出を しているものもあることから、4〜5割ほどはガラガラでご案内も十分とは言 えません。
 新しい図書館づくりはこれからが勝負です!利用者の皆様と創り上げていく 図書館を目指し、今後もがんばっていきたいです。また、近くにお越しの際に はぜひお寄りください。


■第98回目  杉本 久美子 さん(藤枝市立岡出山図書館岡部分館)

 岡出山図書館岡部分館は、平成21年1月に岡部町と藤枝市が合併した為、 岡部町立図書館の名称が変わったもので、旧町民センターおかべの中にありま す。
 少し重いドアのレバーを引き開けると、すぐにカウンターがあります。「こ んにちは!」よく来ていただける方の本の好みはわかっています。「あの人の 新しい本、読みたいのだけれど。」で、「ああ、○○ですね、ここにはないけ れど、駅南館にはありますよ、予約、いれましょうか?」と、小さい図書館な らではの応対をしています。
 平日の午前中は、年配の方や小さな子供を連れたお母さんたちがよくみえま す。ウォーキングの時聴くためのCDを吟味していたお爺ちゃんは、ポップな 曲を選んで借りていきました。
 お昼になると、昼休みを利用して本を借りに来る、会社の制服姿の方もみえ ます。すぐ近くに岡部小学校があるので先生方もよく利用されます。
 午後になると、学校帰りの小学生や幼稚園のお迎えの帰りの親子が多くなり ます。習い事の時間調整に寄っている子も。小学生に今いちばんの人気は今年 1月から設置された自動貸出機です。これを使いたいが為に貸出カードを作る 子がふえました。今までは「見てるだけ〜」と閲覧席に陣取るだけだった子ど もたちが、「何を借りようか?」と書棚を見つめます。
 また、近くの老人ホームや学校にボランティアで読み聞かせを行っている方々 も、対象年齢にあった本・季節にあった本を探しにみえるので相談を受けるこ とが多くあります。ここで間に合わないときは、他の図書館で探して資料をご 用意しています。現在、当館から市外の図書館への依頼を直接できないのが、 歯がゆく感じる時です。他館の本の借り入れは合併前によく行っていたので( 本の所蔵数が少ない故ですが)、できれば復活させたいと思っています。カウ ンターに来てくれた方のお話を聞きながら探している本の所蔵館を見つけ出し、 借り入れの手続きをその場で行う、小さい図書館の利点を失くしたくないなと 思っています。
 「図書館が合併によってすごくよくなったね。」と言われるように私たち3 人、笑顔で今日も張り切っています。是非、のぞきに来てください。


■第99回目  片瀬 さとみ さん(牧之原市立榛原図書館)

 牧之原市は、青い海や緑の山々の美しい自然に恵まれたところです。そして、 6月4日には『富士山静岡空港』から、飛行機も飛び立つ予定です。
 牧之原市の図書館は?と言いますと、相良図書館(本館)と榛原図書館(分 館)があります。昨年度は、両館共に3ヶ月間休館させていただき、図書管理 システムが導入されました。リニューアルオープンして1ヶ月が経ちましたが、 やっと、現代的な図書館に一歩近づけたように感じています。蔵書検索や貸出 確認もスムーズに行うことができ、以前に比べとても便利になりました。
 しかし、小さな図書館で蔵書数も少なく、職員も少ないため、十分なサービ スについては、まだ考えなければならないのが現状ですが…ただ、小さな図書 館ならではのよさもあり、市民の皆さまが図書館に親しみを持ち、気軽に来館 してくださっているので、その想いや期待を裏切らないように、親切に温かく 応えるよう心がけています。
 今後は、これまで以上に利用していただける図書館づくりを工夫し、本と出 会えて良かった!と実感していただけるように努力していきたいと思っていま す。


■第100回目  渡辺 基史 さん(三島市立図書館)

 三島市は人口約11万4千人。市立図書館はJR三島駅近くの本館と、市南部の 郊外にある分館の全2館と移動図書館車が1台あります。所蔵資料は約39万点、 本館の年間入館者数は約42万人、うち貸出者数約22万人、貸出点数約69万点で す。本館は、新館として開館後12年が経過し、様々なサービスを開始して、 利用は増加傾向にあります。
 今回紹介するのは、私の担当している障害者サービスです。内容は音訳、点 訳資料の製作、貸出、相互貸借です。平成9年からボランティア養成をはじめ、 試行錯誤を繰り返し、昨年度から「ないーぶネット」(データベースによる相 互貸借のシステム)への点訳図書データのアップロードとデイジー図書(デジ タル録音図書)の作成をはじめました。
 障害者サービスについては、サービス方針を決めることから、ボランティア との関係や資料作成技術の習得にとても苦労してきました。しかし、当初は全 くなかった貸出も、昨年は年469タイトルの貸出と点訳図書451回のダウンロー ドがされ、今後の当館の障害者サービスの方向性が見えてきました。利用対象 者も少数で地味なサービスですが、公共施設だからこそできるサービスの一つ だと思います。障害者サービスは専門知識がなくてもできる部分はありますの で、まだ始めていない図書館は検討して欲しいと思っています。