「こんな図書館にしたい」「私の出会った図書館員」「心に残るこの1冊」
など、図書館員の“おもい”をリレー形式で紹介していきます。
■第81回目 松下 恵子 さん(掛川市立大東図書館)
私が初めて受けたレファレンスは、幼い女の子からの「えかきうたの本はど
こですか?」という質問でした。図書館に勤務し始めて間もない頃で、まだ、
本の配置も頭に入っていませんでした。「えかきうた、えかきうた・・・。え
〜!?どこ〜!?」向かった先は、ベテラン先輩司書のもと。「あぁ。はい、
はい。」いとも簡単に、案内してもらいました。また別の日には、元気な小学
生の男の子たちから、「ユンボとか、いろいろのってる本はどこにあるだ?」
「えっと、ユンボって何?」「え〜!!ユンボ知らないの〜!!」「・・・知
らないの」
あれから、10年以上が経ちました。昨年4月にオープンした大東図書館で、
現在館長となったベテラン先輩司書のもと、少しは頼りになる司書になれただ
ろうかと、考えながら働いています。隣接する文化会館シオーネ前の広場では、
ひまわりの花が満開です。恵まれた環境で働けることを感謝しつつ、多くの方
に利用され、親しまれる図書館を目指して、共に成長していきたいと思ってい
ます。
■第82回目 大石 佳代子 さん(牧之原市立図書館)
牧之原市には、相良図書館と榛原図書館があります。どちらも蔵書数、職員
数共に少ないとても小さな図書館です。「広い立派な図書館を!」と言われる
一方で「小さいから職員が身近で気軽に来られる」と言ってくださる方なども
いて、小規模ならではの親しみやすい図書館づくりに励んでいます。
とはいえ、リクエストやレファレンス対応など小さい図書館なりの悩みは色
々あるのですが、中でも両図書館の共通の悩みが、「電算化への移行」です。
図書館担当として社会教育室に異動した今年、久しぶりに図書館に行き、中学
生の頃と変わらない手書きによる貸出・返却方法に、衝撃を受けたのを覚えて
います・・・。
しかし、いよいよ今年度、両図書館に簡易ですが図書管理システムが導入さ
れることになりました。この9月から相良図書館、12月から榛原図書館を3
ヶ月ずつ休館して、図書データの登録作業に入ります。図書館を愛用してくだ
さる方々にとてもご迷惑をかけてしまうのですが、再び開館したときには、今
以上に利用しやすい図書館になるように、職員一丸となって頑張りたいと思い
ます!
■第83回目 須山 功豊 さん(静岡県立中央図書館・歴史文化情報センター)
県立中央図書館歴史文化情報センターは、『静岡県史』編さんの過程で膨大
な時間と手間をかけて収集された古文書や新聞などの写真を保管し、整理・公
開している機関です。場所は、駿河区谷田の中央図書館本館ではなく、葵区追
手町の中央ビル7階にあります。
先日、他県の大学研究者の方がいらして、史料を閲覧・複写されました。既
に『静岡県史』資料編に掲載されている史料だったため、雑談の中で事情を伺っ
たところ、『県史』資料編の活字では数字が合わないので、読み間違えの可能
性もあると思い、原史料(の写真)をわざわざ閲覧しに来たということでした。
また、別の研究者の方は地震に関する史料を収集されていて、当センターのデー
タベース検索でヒットした約500件の史料の一部を、3日かけて撮影して行かれ
ました(その後、翻刻して史料集を出版されています)。
歴史文化情報センターの利用者数は必ずしも多くありません。しかし、利用
者の方一人ひとりにとっては、当センターの資料によって研究が完結するか否
かに関わるわけで、数百年後に江戸時代等を研究する方々のためにも、当セン
ターの資料を残しておくことは、とても重要なことだと再認識しています。
■第84回目 武田 三世 さん(静岡市立蒲原図書館長)
課題図書コーナーに並んでいた、小学校低学年向けの児童書『かわいいこね
こをもらってください』。表紙の子猫が、なんとも可愛らしく「見てね。読ん
でネ。」と主張しているようで、思わず手に取ってしまいました。
小学生のちいちゃんは、カラスが突っついているダンボール箱の中にいた子
猫を連れて帰りますが、アパート暮らしのため動物が飼えません。そこで、お
母さんと貰ってくれる人を探すのです。
私も、今年3月まで「ニャンてワンダフル」な生活をしていました。2匹と
も由緒正しき雑種でしたから捨てられたのでしょう。そのためか、幼いちいちゃ
んが必死になって行動する姿に、「諦めたらダメ。」と激励?していました。
幸いなことに、ちいちゃんが拾った子猫は、保健の先生のともだちが飼って
くれることになります。その後、先生のともだちからステキな手紙(ぜひ、本
で確認してください。)が届きます。私もとても嬉しくなりました。
暗いニュースが報道されるこの頃ですが、全ての生き物に慈しみや優しい心
を持つことの大切さが伝わってきます。子ども向けの本は大人向けの本でもあ
る、と改めて認識した次第です。
■第85回目 百瀬 敏雄 さん(静岡市立清水中央図書館長)
昭和55年頃だったと思うが、興津公民館に異動となり、県の補助事業である
家庭教育学級「母と子の読書活動」の担当となった。当時、事業開始から2年
目を迎え、今後は自主運営を進めていくことになっていた。
あまり子育てには関心がなかった自分と、本を読むのが嫌いな妻であったが、
長女が4歳、次女が1歳という条件もあり、妻も渋々この教室に参加すること
となった。
私は、1年間のプログラムを計画したり、時には受講生親子と一緒に、県立
図書館の芝生の所へハイキングに行き、絵本の読み聞かせをしたりした。子ど
もを寝かしつける時には、本棚から自分の気に入った本を必ず持ってきては読
んでくれと子どもにせがまれたものだった。妻は、その教室の中でよい絵本の
選び方・読み方等を学び、結構自分で絵本を買うこともあり、家の本棚が絵本
で一杯になっていった。
その当時、自然と我が家は絵本の世界に入り込んでいった。子どもは自分の
気に入った本が必ずある。我が家の思い出の絵本は、長女が「はじめてのおつ
かい」、次女が「めがねうさぎ」であった。今、長女は自分の子どもに「はじ
めてのおつかい」を読み聞かせている。
■第86回目 梶山 光雄 さん(静岡市立南部図書館長)
当館では、約3,400冊のコミック本を所蔵し、幅広い年代の方々に利用されて
います。特に夏休み期間中は圧倒的に子ども達が多く、朝早くから玄関に並び、
開館と同時に一目散にコミックコーナーに向い、連載本を抱えて読む光景が見
られます。当然、人気コミック本ともなると常に予約が殺到し、何週間も待つ
ようになります。
図書館は様々な事柄が自然と身につく場所です。読書離れが騒がれる中、幼
い頃から図書館に通って、好きな本を選び、文字を読む習慣を養ったり、館内
では静かに本を読むといった社会的ルールを学んだり、果てはスポーツコミッ
ク本や恋愛コミック本を通して、いろいろな人生を追体験し、成長していくこ
ともあるでしょう。
今ではアニメが世界ナンバー1になっている日本で、この本を読んでいる子
ども達の中から将来第二の「手塚治虫」や「赤塚不二夫」になる子どもがいる
かもしれないと思うとわくわくします。どんな本でもかまいません。読書を通
して感性を育み、夢のある子ども達に育ってほしいと願いながら毎日仕事をし
ています。
■第87回目 中山 操 さん(伊豆の国市立中央図書館)
昨日は学童保育、今日は小学校に出かけて読み聞かせなどを行ってきました。
いつものことながら、終わるとホッとして、肩の荷を一つ降ろした気分になり
ます。
人前に立つのが苦手なこともあり、図書館でおはなし会をはじめた頃は毎回
ぎりぎりまで選書に悩み、不安で前夜はなかなか眠れないほどでした。
将来の図書館の利用者を育てるには子どもをターゲットにするのが一番との
考えから、小学校低学年への出張おはなし会を中心に館外での活動を少しずつ
広げてきました。月に4〜5回も出かけるようになった今でも、貴重な授業時
間をいただく価値のあることができているか自信が持てず、毎回悩みと不安は
つきませんが、年齢を重ね図々しくなったせいか眠れないことはなくなりまし
た。
「子どもたちがだんだん前のめりになって本に集中する姿に感動した。」と
言ってくださる先生や、時間が終わると本の周りに集まってくる子どもたちの
姿に励まされ、その度に本の力ってすごいなぁと感動しています。
学校・幼稚園の先生方や学童・その他の担当の方々が、時間を作って呼んで
くださるからこそできる貴重な体験に、心から感謝しています。
■第88回目 糸賀 将平 さん(下田市立図書館)
私が小学校の頃、下田には「てんとうむし」という名前の移動図書館があっ
た。当時図書館事業として行っていたもので、移動図書館車に本を積み、各学
校や地域を巡回するというシステムだが、私の地域は小学生が徒歩で図書館に
行くには遠すぎたので、この「てんとうむし」は非常にありがたく、来るだけ
でワクワクしたものだった。
しかし時は過ぎ、進学していつの間にか利用しなくなっていたそれは、いつ
の間にかその役目を終えていた。
今図書館で働いてみて、この「てんとうむし」の名前を見るたびに当時を思
い出すとともに、今の子供たちはどうしているのだろう、と考えるときがある。
子供はおろか、大人も年々少なくなるこの地域で、移動図書館車を出すのはな
かなか厳しいことだ。しかし発想を変えれば、利用者一人ひとりのニーズに応
えることが可能なのではないだろうか。例えば、地区の集会等での出張貸出や
お話し会などもやってみれば面白いだろう。
これらを実行に移すのは簡単ではないかもしれないが、図書館をより多くの
人に利用してもらうには、こちらから積極的に新たなサービスを考え、提供し
ていかなければ生き残れない時代がきたのではないか、と感じることがある。
■第89回目 坂本 正夫 さん(熱海市立図書館)
私は、今年の4月、図書館にブックバスの運転手として異動して来ました。
異動したばかりの頃は、図書館で利用者から受ける「この本どこにありますか
?」との質問に「少々お待ちください。」と言うことしか出来ず、いつも先輩
達に迷惑ばかり掛ける毎日でした。
ブックバスでも同様に、利用者の希望図書など期待に応えられるか不安にな
りました。そんな私でしたが、ブックバスを通して色々な利用者の意見要望等
を聞いているうちに、できるだけ利用者の要望に応えられるよう、努力しよう
と思いました。
なぜなら、熱海市は高齢者の多い町だからです。さらに坂の多い町でもあり、
年配者の方達は図書館に行きたいけどちょっと遠いかな、という方がブックバ
スの利用者に多数見られたからです。
毎月各ステーションをブックバスで巡回するうちに、利用者の方と会話をす
る機会が多くなり、この方は時代小説、この方は推理もの、この方は新着図書
等、ブックバス利用者の好みの図書が少しだけ分かるようになりました。「今
日はこんな本をお持ちしてみましたけど…」という言葉の投げ掛けに反応して
くれる利用者に対してとても嬉しく思いました。たった一冊の本をお持ちした
だけでも、「ありがとう。この本面白かった。」と声を掛けてくれた時の、利
用者の喜ぶ顔がとても仕事の励みになりました。気軽に利用できる図書館、気
軽に利用できるブックバス、市民に身近な図書館を目指したいと思います。
■第90回目 井端 洋介 さん(伊東市立伊東図書館)
4月の異動で図書館にやってきて8ヶ月が過ぎようとしています。この頃、
移動図書館車「ともだち号」の担当としての仕事にもようやく慣れてきたとこ
ろです。
伊東市の移動図書館車は、小学校や地域のコミュニティセンター等を中心に
20ヶ所を巡回しています。なかでも小学校では、児童の下校時間に合わせて
貸出を行っているので、小学生への貸出冊数の割合が多くなっています。その
ため、巡回先で子供たちに接する機会も多く、子供たちがうれしそうに本を選
んで借りていく姿をよく目にします。子供たちにとって、「ともだち号」で本
を借りることが、「読書」習慣のきっかけになってくれればと感じながら仕事
をしています。そこで、「ともだち号」の子供向けの蔵書については、小学生
が手にとって読みたいと思える本を中心にそろえていく方針です。なかなか小
学生の好みを把握するのは大変ですが、がんばっていこうと思っています。
最後にお知らせですが、伊東市立伊東図書館では、平成21年2月中旬に財
団法人日本宝くじ協会の助成をうけて、移動図書館車が新しくなります。この
新しいともだち号もぜひよろしくお願いします。