「こんな図書館にしたい」「私の出会った図書館員」「心に残るこの1冊」
など、図書館員の“おもい”をリレー形式で紹介していきます。
■第71回目 勝亦 晃子 さん(富士宮市立中央図書館)
『鯨を捕る』(市原基/作 偕成社 2006年)という児童書があります。
カメラマンの著者が、1982年に捕鯨船に3カ月間同乗した記録です。鯨をどの
様に捕らえ、食肉に加工するのか、働いている人たちは・・・。捕鯨船につい
て、この1冊でいろいろな知識を得ることができます。
図書館に勤めていると児童書にも接することになります。児童書には、一般
書顔負けの知識が詰まっています。まず、子どもでも分かるように説明が簡潔
で丁寧。また、写真や図などを使い(カラーも多い)分かり易く書かれていま
すし、装丁も凝ったものが多いです。ですから、時々大人の利用者の調べもの
で児童書を案内することがあります。その記述の詳しさに感心する利用者もい
ます。図書館に勤めているからこそ、多くの児童書に出会うことができ、また
良さを知ることもできたのだと思います。これからも人と本をつなぐお手伝い
が少しでもできればと思います。
■第72回目 野村 貴子 さん(富士宮市立中央図書館)
今から30年ほど前、私が通っていた小学校は、山に囲まれた全校生徒が
120名ほどの小さな学校でした。図書室も小さくて冊数もそれほど多くあり
ませんでした。そんな中、ひばり号(自動車図書館)がやってくるのを毎回楽
しみにしていました。学校には無い、いろいろな本があっていつもわくわくし
ていました。また、その時に、ひばり号に乗ってくるお兄さんたちと会うのを
とても楽しみにしていたのを覚えています。一緒に遊んでくれたり、話し相手
になってくれたりと、今も楽しい思い出となって残っています。
それから約13年後、自分が図書館で働くことに。その時のお兄さんは、も
うおじさんになっていました・・・。
私も、図書館に入って14年経とうとしています。もう、おばさんに近い年
齢になってしまいましたが、小さい頃の楽しい記憶というものはいつまでも残
るものです。今度は、私が、図書館にくるのは楽しいと子どもたちに思っても
らえるようにしたいと日々思っています。
■第73回目 飯田 貴美子 さん(伊豆市立修善寺図書館)
春ですねー。伊豆のへそ、伊豆半島のまんなかにあります伊豆市立修善寺図
書館図書館の桜も満開になりました。
この季節のおはなし会には、マーシャ・ブラウン作『三びきのやぎのがらが
らどん』はいかがでしょう。勇気と元気が沸いてきますよ。昔、自分の子ども
たちに読んであげた本を、今は、図書館のおはなし会に来てくれる子どもたち
に読み聞かせをしています。
さて、近藤史恵著『サクリファイス』、この本はとても衝撃的でした。
「サクリファイス」とは、犠牲という意味があります。自転車のロードレー
スでは、先頭の選手は空気抵抗をひとりで引き受けることになるので、レース
の最中でも順番に先頭交代するのがマナーです。そのため、ヨーロッパでは紳
士のスポーツと言われています。ロードレースには、エースとアシストという
役割分担があります。チームのエースがパンクをすれば、アシストするチーム
メイトはホイールを差し出すそうです。初めて知るスポーツに戸惑いながら、
エース石尾とアシスト白石、チーム“オッジ”の人間関係に引き込まれていき
ました。後半、少しずつ明らかになっていく真実。読み終えてから、タイトル
の意味が重く心に響きました。
■第74回目 杉山 恵子 さん(伊豆市立中伊豆図書館)
伊豆市立中伊豆図書館は、伊豆市役所の中伊豆支所内にあります。所蔵資料
19,000弱、年間来館者数10,000人程の小さな図書館です。
現在、館内は春爛漫。入り口のドアは画用紙で作った春のつるし飾り、各コ
ーナーでは「春」を意識した面出し展示を行っています。今回は、一般書「春」
・絵本コーナー「ともだち」・YAコーナー「出会い」をテーマにしてみまし
た。
できるだけたくさんの市民の方たちに来館・利用してもらえるよう、様々な
資料を手にとってもらえるよう、どの資料をどの様に展示するか☆臨時職員3
人組、日々奮闘中です。
■第75回目 土屋 由美子 さん(伊豆市立天城図書館)
図書館に勤める前から、「ブックスタート」という言葉はなんとなく聞いた
ことがありました。しかし、普段幼い子と知り合う機会もなかった私は、“幼
いころからの読み聞かせの大切さ”なのだろうと思っていました。頭では分かっ
ていても、「私たちが物語などを読むときは、主人公や物語の登場人物の感情
を理解しながら読んでいるけれども、そういったことを経験として理解しない
赤ちゃんには、どういった意味を持つのだろう。」と疑問に思っていました。
その後、おはなし会で初めて赤ちゃんに触れ合う機会に恵まれ、赤ちゃんが
私のお話や手遊びに興味を示したり笑ったりしてくれたときに、「ブックスター
トは早期学習ではない。」という意味がようやく腑に落ちました。
やまだようこさんの『ことばの前のことば』の中で、初期の人のコミュニケー
ションを「うたう」こと、としています。これは、音を口ずさむことではなく、
気を合わせてお互いが動きあう、という情動的な行動のことをいいます。赤ちゃ
んに向かってにこにこ手を振ると、笑い返してくれることがあります。自分と
他人の区別が難しい赤ちゃんにとっては、他の人の感情もそのまま自分の感情
となってしまうのかもしれません。読んでくれた絵本の楽しさや悲しさを読ん
でくれる人と一体となって赤ちゃんは徐々に自分のものとしていくのでしょう。
赤ちゃんは、温かい関わり合いの中で、自分に向けられたことばを蓄積して
次第にその意味を理解していきます。学習などと考えずに、温かい気持ちでこ
とばをかけることが赤ちゃんとの読み聞かせなのだなと感じました。
■第76回目 山田 千重子 さん(伊豆市立土肥図書館)
「地域に読み聞かせを広めてもらえませんか?」 この一言が図書館で勤務す
ることになったきっかけでした。
勤めはじめた当時(平成11年)、図書館職員は私一人。加えて家庭教育学級
と高齢者の講座を担当していましたので、そちらに関わっている時、図書館は
無人状態。そんな中での最初の仕事は、広報誌を通して「土肥には図書館があ
ります…」のPRでした。私自身もそうでしたが、土肥に図書館があるというこ
とを知らない人が多かったのです。PRにより利用者も次第に増え、私自身が仕
事にも慣れた頃、ラジオ体操後に紙芝居を2冊読むという「夏休み限定出張紙
芝居」を実施しました。地域の皆様に支えられて現在も継続中ですが、学ぶこ
とは沢山ありました。
平成16年の合併に伴って電算化が行なわれ、図書館は新しいスタートを切り
ました。私が図書館職員として勤務した9年間には、本当に色々なことがあり
ました。私は3月で図書館を退き、4月からは福祉関係の職場で勤務をしてい
ます。図書館の仕事からは離れてしまいますが、読み聞かせ等は今後も続け、
これからは利用者の一人として図書館に関わっていきたいと思います。今まで
支援して下さった皆様、本当にありがとうございました(^^)
■第77回目 安田 宏美 さん(静岡県立中央図書館)
私がこれまでに最もよく図書館を利用したのは、アトピー性皮膚炎がひどく
なった時でした。どんな治療法があるのか、どのような病院があるか、食事は
どんな献立にすればよいのかなど、何を調べるにも図書館は頼りになる存在で、
ずいぶん助けられた記憶があります。この他にも軽めの読み物や写真集など、
気晴らしになるようなものも、よく利用しました。生活に役立つ資料はもちろ
ん、ちょっと疲れた時に気分転換になるような資料も揃っていて、しかもそれ
が公共サービスとして無料で利用できるということ。公共図書館のよさってこ
ういうところにあるのかな、とその時感じました。一利用者として感じた図書
館サービスの必要性を業務に生かしていきたいなと思っています。
静岡県立中央図書館に勤務して一年経ったばかりで、まだまだ力不足を感じ
る毎日ですが、少しでも多くの方に図書館サービスが提供できるよう日々精進
に努めたいと思います。
■第78回目 石田 直美 さん(静岡県総合教育センター図書室)
静岡県総合教育センターは静岡県下の教職員が研修・研究等を行ったり、学
校を支援したりする教育機関です。当図書室はこの中にあり、教育関係を中心
にして約35,000冊の図書、約134,350本の教育資料(教育論文、学習指導案等)、
約33,000冊の教育雑誌、この他に県内の学校経営書や要覧、教科書、通信簿等
を所蔵しています。
また、「学校図書館支援センター」としての機能も果たしていくべく、学校
図書館に関する相談に応じたり、職員が学校図書館を訪問して直接支援したり、
学校図書館や司書教諭等に関する研修会を開催したり、また各地で行う研修会
へ講師を派遣する等の事業も行っています。これまでの主な相談・支援内容は
「学校図書館のデータベース化の手順」「学校図書館を使った授業」「学校図
書館の廃棄」「静岡県下の学校図書館に関する情報提供」等で、本年度4月か
ら16か所に出向きました。実際に学校図書館を見て、担当教職員から話を伺う
と、「子どもたちのために学校図書館をよりよくしたい」「学校図書館を活用
し授業を改善して子どもたちに力を付けたい」という熱い思いが伝わってきま
す。これからも、「読書県しずおか」の構築に向けて、学校図書館を支える皆
様と力を合わせていきたいと思います。
■第79回目 増田 曜子 さん(静岡県立大学附属図書館)
静岡県立大学は、平成19年4月公立大学法人として新たなスタートを歩み始め
ました。図書館もいくつかの改革を行い、今年度は国際報道写真家 岡村昭彦氏
の蔵書(岡村文庫)を整備したことを記念して、講演会を開催しました。講演
会に参加していただいた多くの方々からは、岡村文庫への期待と励ましの言葉
をいただき、地域に開かれた大学図書館の意義と役割を感じることができまし
た。また、今月は隣接する県立中央図書館から宮澤賢治の絵本を借用・展示し、
併せて大学図書館の関係資料を紹介しています。
先日、閲覧室に出向くと、紹介した資料を真剣に読んでいる学生を見かけま
した。声をかけてみると、自分は看護学部の学生で、本を読むことが何より好
きですと答えてくれました。彼女との会話から「患者は自分の命を誰に託する
ことなく自ら生きようとし、看護者は患者を支えるべく、医師とは異なる役割
のなかで、患者中心の医療実現のために働く。」(『報道写真家岡村昭彦−戦
場からホスピスへの道』)の言葉を思い起こしました。将来彼女が患者に寄り
添い、患者を支えてくれる看護師に成長してくれることを願うと共に、一冊の
本を手渡すことの責任を改めて感じました。これからも、図書館を利用するみ
なさまに少しでもお役に立てる図書館運営に努めてまいります。
■第80回目 柿本 恵子 さん(島田市立川根図書館)
川根図書館は小さな図書館ですが、小さな図書館ならではのよさもあります。
先日は、こんなことがありました。私がカウンターにいると、「今度、○○県
に行くんだけど、地図ある?」と聞かれ、地図や鉄道路線図を見ながら調べる
お手伝いをしていると、ちょうど次に見えた方が、「えっ!○○県△△郡?
私○○県の出身なんだけど・・・・」と声をかけてくださり、行き方を詳しく
教えてくださいました。この事がきっかけとなり、お互いに話してみたら、お
宅どうしが近い事もわかりました。
このように、図書館を通じて、人と本がつながり、人と人とがつながってい
くことができたことをうれしく思いました。
私はこの4月から勤めている新米図書館員ですが、3月までは学校に勤めて
いました。子どもたちには、「食べものは体の栄養、本は心と頭の栄養だよ。」
と話してきました。立場は変わりましたが、本を読む楽しさや本が学習に役立
つ楽しさを実感してもらうために、本の紹介や読み聞かせ、図書館の本を活用
した授業のお手伝いをしながら、今後もどんな工夫やサービスをしたらいいの
か、常に利用者のことを考えながら仕事に励んでいきたいと思います。