「こんな図書館にしたい」「私の出会った図書館員」「心に残るこの1冊」 など、図書館員の“おもい”をリレー形式で紹介していきます。

■第61回目  原田 満由美 さん(湖西市立図書館)
 子どもの頃の私は、お話が大好きでした。図書館はまだなかったため、幼稚 園で借りる絵本は何よりの楽しみで、穴の開くほど読んで丸暗記もしていたよ うです。お気に入りだった絵本は、今でもタイトルを見ただけで登場人物の表 情や洋服の柄が目に浮かびます。それから、祖父がよく昔の話をしてくれまし た。戦争を生き抜いてきた祖父なので、苦労した話が多かったけれど、祖父が 布団の脇で語ってくれるお話に、いつもハラハラ・ドキドキしたのを覚えてい ます。子ども時代に「お話って面白い!」と身をもって体験させてもらいまし た。
 そんな私が念願かなって図書館配属となり、また「お話」と関わることにな りました。子どもの頃大好きだった絵本との再会もあり、改めて長く読み継が れる本のすばらしさと、子どもの本の奥深さを実感しています。しかし児童担 当とはいいながらも、読んだことのない本が多く、まだまだ勉強が足りないと 感じます。今は子育てをしながら、子どもと一緒に本を楽しみ、本を見る目を 養っています。そして図書館に来る子どもたちに、楽しい、わくわくするお話 をたくさん手渡してあげたいと思っています。

■第62回目  田口 華恵 さん(浜松市立中央図書館)
 どうしたら、図書館の楽しさや、情報いっぱいのおもしろさを伝えられるか。 中央図書館で広報を担当して2年。そんなことを考えつつ締め切りに追われる 毎日です。広報はままつを始め、図書館だより、図書館メールマガジンの作成、 市役所のメールマガジンへの寄稿、外部団体やマスコミへの情報提供。また図 書館HPの更新も重要な仕事です。今年は、月に一度FM Haro!に生放 送で出演する機会をいただいています。始めは緊張で原稿を読むのが精一杯で したが、最近はやっと会話を楽しむ余裕がでてきました。新聞の取材では写真 が載り、「見たよ!」とお客様から声を掛けていただいたりもしました。
 もともと広報の仕事には興味がありました。図書館のことをひとりでも多く の方に知っていただくことが、図書館にとっても大きな力になると思うのです。 でも、いちばん大切にしたいのは、窓口に来てくださったお客様に顔の見える 誠実な対応をすること。「相談してよかった。またよろしくね」と言っていた だけるのが何よりの励みです。

■第63回目  西田 昌代 さん(浜松市立南図書館)
 だんだんと秋も深まってきて、お日様の沈むのが早くなってきました。秋の 夜長には読書でも・・・ということでしょうか?図書館のカウンターでも長編 の小説を借りていかれる方が多く見受けられます。そこでと言ってはなんです が、私も1冊ご紹介したいと思います。「小公女/バーネット作/岩波書店」 です。言わずと知れた名作ですが、5年程前に改めて読み直して以来、私のバ イブルです。簡単にあらすじをご紹介します。大金持ちの娘セーラは精華女塾 に入ります。特別寄宿生として、寮の中でも一番良い部屋を与えられ、まるで 王女のような待遇です。気質の良さも手伝い学校一の人気者のセーラでしたが、 その夢のような生活も突然打ち切られます。父親がダイヤモンド鉱山を発掘中 に熱病にかかり、資産も親友に持ち逃げされ、無一文で亡くなった途端、小間 使いに転落するのです。大金持ちであっても貧乏であってもどんな境遇でも変 わることのないセーラの誠実に誇り高く生きようとする姿に感動します。日常 の些細なことにイライラしたり落ち込んだりする私ですが、その度にこの本を 読んで反省しております。物語の美しさ・内容のおもしろさも手伝い、作者の 伝えたい大切なことがすーっと自然に入ってきます。何が正しいのか?何でも 有りのような世の中ですが、人としての正しさを教えてくれる1冊です。

■第64回目  川崎 智子 さん(浜松市立城北図書館)
 図書館へ異動となって5年目になりました。それまで私は市役所で外国人登 録に携わる仕事を担当しており、アルファベットが飛び交う職場から一転、膨 大な日本語資料に囲まれた職場勤務となりました。慣れるまではいろいろ戸惑っ たりもしましたが、それも懐かしい思い出。現在は昨年10月に開館したばか りの浜松市立城北図書館で、レファレンスサービスを担当しています。レファ レンスを担当するようになり、最近感じることがあります。それは自分が「物 知り」になってきたのではないか?ということです。これはレファレンスを担 当する図書館員であれば、誰でもそう感じるのではないでしょうか。実際、テ レビの雑学系クイズ番組を見ていても正解率が上がったような…。(余談です が、歴史上の人物の肖像画を見て、誰か当てる問題が得意です。)
 利用者の質問に対して調査を進めていくうちに、自然と自分の知識も増えて いく。とてもやりがいのある仕事です。後はせっかく得た知識を、いかにして 忘れないようにするかが勝負です。しっかり蓄積することができたら、いつか はクイズ番組出演に挑戦してみようかな。

■第65回目  山口 美和子 さん(浜松市立舞阪図書館)
 浜名湖の朝は気持ちいい。通勤途中の10月のある朝、V字形の隊列を組ん だ鳥たちが西に向かって飛んで行った。まだまだ暑いと思っていたのに季節は 確実に変わっていた。家の近く浜名湖沿岸には越冬する鳥たちがやって来て、 日増しにその数を増やしている。
 秋になると、橋のたもとには釣り人が集まる。日曜日の出勤で運転している と、ある橋の上にいつものおばあちゃんが釣り糸を垂らしていた。わたしもな んだか釣りがしたくなった。仕事帰り、舞阪の店では地物の魚が手に入る。形 は小さいが、さより・はぜなどを買って刺身にして食べる。もう最高!!
 舞阪図書館では、釣りの本がよく借りられる。また、子どもたちの調べ学習 では、「浜名湖にいる魚は何ですか。」「アマモについて調べたい。」「海苔 の養殖について調べたい。」など、水産の町舞阪ならではの内容が多い。ここ 舞阪町弁天島には、静岡県水産技術研究所浜名湖分場があり、体験学習施設ウ オットがある。子どもたちからは、「見学してきた○○○という魚について書 いてある本はないですか?」などと尋ねられる。
 図書館は、利用者の皆さんが知りたいことを解決できる場となることを目指 しています。今を知り、過去を知るための資料として、図書館では地元につい て書かれている本、小冊子、パンフレットなどを集めています。どうぞ図書館 へこのような資料をご寄贈ください。

■第66回目  伊藤 治 さん(浜松市立可新図書館)
 私は4月から可新図書館に配属され、担当は児童奉仕です。遠い昔にも図書 館に配属されていたことはありますが、これまで児童担当はしたことがなく、 個人的にも児童書はあまり読んでいなかったので、まず基本図書を覚えること から勉強しています。そして、おはなし会(園児から小学校低学年対象)も私 の担当ですが、現在は先輩職員や読み聞かせボランティアの方々と相談しなが ら、「絵本の読み聞かせ」の見習い中で、初心者マーク(若葉ではなく枯葉で すが)の蛇行運転を繰り返しています。
 おはなし会に来てくれる子ども達が最後まで聞いてくれるか、いつも不安を 抱えながらやっていて、おはなし会が終わればひとまずほっとします。その後 は、果たして今日選んだ本でよかったのか、自分の読み方が本の内容を正しく 伝えていたのか、子ども達の反応を思い浮かべては、やっぱり普通の朗読とは 違うなと、改めて絵本の読み聞かせの難しさ、自分の勉強不足、感受性の鈍さ を痛感しています。
 幼い頃によい絵本に出会えると、子ども達の素直な感受性は、そのときの感 動をずっと持続させるようです。その出会いのきっかけをおはなし会で見つけ てくれたらと期待しながら、「本当によい絵本であれば大人も子どもも楽しめ るものだ」という先輩たちのアドバイスや『おはなし会のための絵本リスト』 (浜松市立図書館児童奉仕連絡会編集)を頼りに、聞き手である子ども達の反 応に教わりながら、五十の手習いに勤しむ日々です。

■第67回目  福島 紀子 さん(富士市立中央図書館)
 いよいよ寒さも本格的になり富士山の頂はすっかり白くなっています。富士 市はその名のとおり富士山の麓にあって図書館の窓からも北側に大きく富士山 を望むことができます。富士山もどこから見るかによって形がさまざまで、山 梨県側からや静岡県内でも場所によっての違いを楽しむことができますが、富 士市からの眺めは富士市役所のホームページから見ていただくことができます。
 さて、富士市立中央図書館では、まだ昨年度に設置したばかりのちょっとし たコーナーなのですが「ビジネスコーナー」というのがあります。ビジネス関 係の本が集めてあって、インターネットやデータベースの使えるパソコンも置 いてあります。図書館でも、社会人の方々を支援するために、ビジネスに関連 するさまざまな情報を提供できるようにしようという趣旨なのですが、先月に は「ビジネス支援講演会」が開催され、その担当をさせていただきました。
 富士市出身の漫画家・作家で、早稲田大学eスクールの現役学生でもある菅谷 充(すがや みつる)さんをお招きし、「eラーニング −あなたもインターネッ トで大学生・働きながらの学び方―」というテーマでお話していただきました。 50代になってからeスクールに入学されて睡眠時間2時間でお仕事も勉強もさ れているお姿や、菅谷さんが中学生の頃から漫画家を目指して東京に足を運ん でいたという情熱的な生き方を伺って感動しました。郷土人作家コーナーには 菅谷さんの本が集めてありますし、カウンター奥にもビジネスコーナーがあり ますから、お気軽に図書館をのぞいてみていただければと思います。

■第68回目  水谷 浩子 さん(富士市立西図書館)
 富士市立西図書館は、新しい図書館への移転と開館準備のために年明けから 休館しています。毎日、書架(書棚)に並んでいる本をダンボール箱に詰める 作業を行っているのですが、本を返しに来るお客さんが「ここが無くなるのは 残念。でも新しい図書館が始まるのをたのしみに待ってるわね。」と声をかけ てくださいます。
 富士市の図書館に勤務して14年近く、その間に中央図書館の移転、西図書 館の古い建物から現在の仮設館への移転、そして今回と、3回の引越しを経験 しました。お客さんをお迎えすることがない毎日。その中で思うことは、やは り図書館は利用してくださる方がいてはじめて図書館である、ということです。
 新しい図書館は、JR富士駅より歩いて5分ほどの場所に、複合施設として 建設中です。1,200平米ワンフロアのゆったりとしたスペースに、おはなしの へや、学習室、多目的室、インターネット閲覧コーナーなどの機能を備え、今 年の4月上旬にオープン予定です。利用者のみなさんに、これまで同様に親し んでいただけるよう、そして豊かで楽しい時間を過ごしていただけるよう、職 員一同、書庫のホコリと格闘しながら準備作業に励んでいます。

■第69回目  福澤 まゆみ さん(富士市立東図書館)
 富士市立東図書館では、年1回児童文学講座という事業を開催しております。 講師の依頼から当日を迎えるまで、大変ですが達成感の味わえる仕事のひとつ です。
 「今年度はどんな講座にしようか?」まずは、例年そこでとても悩んでしま いますが、今年度は、以前に双方の都合がつかず、実現できなかった方にぜひ 来ていただきたいと思い連絡してみました。それが5月のことでしたが、1月 27日(日)に実現することになりました。今年度の講師は『パパ‘S 絵本 プロジェクト』というお父さん3人組(?)をお招きして、子どもさんも一緒に 参加していただける講座を企画しました。
 そして当日を迎えることとなりました。ギターを携えて来ていただいた安藤 パパ、お子さん連れの田中パパ、ウクレレを抱えて来ていただいた西村パパ・・。 どんなおはなし会になるのか?(ワクワク・・)『ことばあそびうた』『これ なーんだ』『きょだいなきょだいな』そして『うんちっち』。お父さんのおは なし会はお母さんには真似できないところがありますね。いつもとは違う、で も1時間程の時間を子ども達が飽きずに聞いていたのですからスゴイです!私 自身もとっても楽しませていただきました。

■第70回目  古谷 浩子 さん(富士市立富士文庫)
 今日は水曜日。一週間で一番のお楽しみがやって来る日。それはTRC(図 書館流通センター)から宅配便のお兄さんの手で運ばれてくる新刊本が到着す る日だからです。
 ダンボール箱が届くと、検収担当の邪魔にならないように、そしていかにも ちょっと通りかかった風を装いながらも興味津々と新着本をチェックします。 みんなの選書をまとめたのも発注データを送信したもの自分自身なのに、届く までの10日間ほどでうまいこと記憶が薄れていますから、毎週新鮮な思いで 新しい本たちとご対面ができます。
 ああ、このシリーズ最新刊が出てたっけ。この著者の本はいつも常連さんの あの人が借りてくれるんだよね。心の中で呟きながら、興味を惹かれた本に触 れます。一番最初にページを開けるのも職員の醍醐味なのです。
 そして検収が済み所蔵印の押された本を手に取り、「よしよし、うちの子に なったね。しっかり働いておいで。」そんな気持ちで新着棚に出します。たく さん借りてもらえますように。大事に読んでもらえますように。借りてくれる 利用者の方を思いつつ、今日もせっせと本を運ぶのでした。