「こんな図書館にしたい」「私の出会った図書館員」「心に残るこの1冊」 など、図書館員の“おもい”をリレー形式で紹介していきます。

■第41回目  山下 多津美さん(静岡市立清水中央図書館長)
 最近読んで面白かった本の一冊に、カニグスバーグの『クローディアの秘密』があります。
 今年の6月9日の朝日新聞「天声人語」で紹介され話題になったことから、図書館員の知識の一つにとの思いから読んだものですが、児童文学とはいえ、大人にとっても非常に面白いものでした。
 内容は、クローディアが弟と一緒に家出をしてニューヨークのメトロポリタン美術館に泊まって…というものですが、メトロポリタン美術館を訪れる子供たちからこの本についての質問が多かったため、美術館では子供向けパンフレットに「ここではもちろん宿泊はできませんよ。でも訪れるたびに冒険が待っています」と書いたとのことです。この文章って、ウィットに富んでいて温かくてすごくいいですよね。常日頃、キレもあってコクもあるユーモアセンスを発揮したつもりが、周りから「さぶい!さぶい!」とシベリアの寒気団みたいに思われてしまうことの多いわが身にとっては、憧れのフレーズになりました。 カニグスバーグの描く情景は、こどもに対する慈しみ・やさしさに包まれています。青少年のいじめ・自殺、幼児虐待・殺人等暗いニュースの多い昨今ですが、社会全体が子どもたちに対して、カニグスバーグのような慈しみ・やさしさを持って接することができれば、世の中はもっと明るくなってくるように思います。

■第42回目  塚田 薫代さん(静岡県立こども病院図書室)
 はじめまして。
 この度、静岡県図書館協会に加盟させていただきました、静岡県立こども病 院図書室です。公共図書館と違い、病院図書室は医学書のみの専門図書室です。 また、当院は小児専門病院ですので、入院中のお子さんのための「わくわくぶ んこ」も展開しております。 詳細はこちらのアドレスからご覧ください。  http://www.pref.shizuoka.jp/kenhuku/kf-14/bumon/tosho/index.htm 
 病気に立ち向かうのも、打ちひしがれるのも、人間の本当の気持ちです。そ れには大人も子どもも、男も女もありません。本当の気持ちに触れるからこそ、 心も動きます。当室も、チーム医療の一員として、病気と闘うお子さんとご家 族のためにありたいと思っております。
 現在、たとえば、小児がんの治癒率は7割を越えました。もはや不治の病で はありません。頑張って治療して、退院したその後、学校や地域に戻っていく お子さんのために、「正しい、新しい医学情報」をみなさまに広く知っていた だきたいと願っております。
 また、みなさまにとって、ご自分の健康は最も関心の高い事のひとつではな いでしょうか。健康・医療情報は、必要不可欠なものです。微力ながら、当室 がお役に立てれば幸いです。

■第43回目  熊谷 成子さん(静岡県点字図書館)
 点字図書館をご存じですか。普通の本が読みにくい、読めない、つまり視覚 に障害を持つ方のための図書館です。全国に90余館あります。扱っているのは 点字図書や録音図書(CD図書、テープ図書)。資料数は公共図書館には及びま せんが、話題の図書から専門図書、週刊誌、月刊誌に至るまで幅広く揃ってい ます。全国的なインターネットによる相互貸借のシステム「ないーぶネット」 も整備されており、北から南から点字図書や録音図書が郵送で飛び回っていま す(送料は無料です)。
 点字図書館と聞くと、イコール点字図書と思われるかも知れません。ところ が、実際は録音図書の利用の方が5倍位多いのです。中高年になってから糖尿 病や緑内障、交通事故などで視覚に障害を持つ方が多いからなのです。これか らの高齢化社会、見えにくくなっても、見えなくなっても読書をあきらめなく て大丈夫と多くの人に伝えたいと日々、考えています。
  
■第44回目  岡部 恵理さん(静岡理工科大学附属図書館)
 静岡理工科大学は、愛野駅から静岡スタジアム方面に向かって歩くこと20分、 緑豊かで静かな環境の中にあります。うぐいすの声を聴いて春の訪れを感じ、 ヒグラシの声を聴いて夏の終わりを感じる。時間がゆったりと流れているよう な環境の中、気が付けばこの図書館に勤務して既に十年以上経ってしまいまし た。我ながら長いな〜とも、それ以上にあっという間だったな〜とも感じてい ます。
 十数年前、インターネットが世間に普及し始めた頃から図書館の業務は大き く変化しました。インターネットを利用した様々なサービスが展開され、学術 雑誌も冊子体から電子ジャーナルへと移り変わり、図書館に行かなくてもサー ビスが受けられ、パソコンで雑誌が読める時代になりました。図書館としての あり方、図書館員としてのあり方が随分変わってきたことを実感します。
 この先、どんな変化がおこるのだろうと期待しながら、日々、新しい情報の 収集や技術を習得し、利用者の方々に喜んでいただける図書館を目指していき たいと思っています。

■第45回目  高橋 史さん(袋井市立袋井図書館)
 市役所に一般事務職として入庁した私が、無理だと思いながらも言いつづけ ていた図書館への異動希望が叶ってはや一年になろうとしています。
 久しぶりに絵本と接することになり子どもの頃に大好きだった絵本と再会す ると、その表紙を見ただけでどんなお話だったか、自分がどんな気持ちで読ん でいたか、当時の部屋の様子まで、二十年以上も昔の記憶が鮮やかによみがえっ てきます。同時に懐かしくも幸せな気持ちに包まれ、今の子どもたちにも本を とおして幸せな想い出ができるよう、仕事への思いを新たにしています。
 まだまだ知識も経験も不十分ですが、子どもの頃からお世話になった図書館 への恩返しのためにも日々勉強の毎日です。

■第46回目  西島 明子 さん(沼津市立図書館)
 昨年、初めて図書館の巡回車に同乗しました。
 私は読書好きな子どもでしたが、そもそも本を読むようにきっかけは、この 巡回車です。当時住んでいた団地の駐車場に、図書館の巡回車が定期的にやっ てきては、本という素晴らしい世界を届けてくれたものでした。
 小学校二年生のとき、ルブランの『ルパンの大冒険』に触れました。漫画は すぐに読み終わってしまうけれど、小説はじっくり読める。本の世界に長く浸 れる。そう思った私は、好んで小説を読むようになりました。反面、絵本には 全く興味を示さない子どもだったので、私の読書が幼児期の情操教育として十 分なものだったのか、と問われると自信がありません。あの頃の私は、まさか 自分が巡回車に乗って本を届ける側になるとは、想像もしていませんでした。
 現在は40万余の世界を提供する立場ですが、時たまカウンターに差し出さ れた本を見て、「ああ、私も読んでみたい」と我に返ってしまうことがありま す。慌てて気を引き締めると同時に、この図書館で誰かがまた素敵な世界と出 会えたことを、心から喜ぶ自分を感じています

■第47回目  井野 直樹 さん(函南町中央公民館図書室)
 函南町には図書館はなく、公民館図書室が図書事務の役割を担っています。 公民館2階の1部屋ですので、職員も少なく、蔵書数も少ないのが現状で、探し ていた図書がなかったり、対応に時間がかかって他の利用者を待たせてしまっ たりすることもあったりで、悩みは尽きません…。
 そんな図書室ですが、小さな空間だからこそできる「明るい対応!気持ちの いい図書室!!」づくりをモットーに日々奮闘しております。職員も少ないので、 蔵書検索も、レファレンス対応も、担当がいるわけではなくその日の職員が対 応します。業務によって担当が変わることなく同じ職員が最初から最後まで対 応するので、利用者とのコミュニケーションも増え、自然と親しくなって、利 用者から気軽に声をかけてもらえるようなほのぼのとした雰囲気ができてきま した。
 たくさんの蔵書があって読みたい本がすぐに読める、調べ物にもその場で対 応できるような図書館とはほど遠いのですが、また来たいと素直に思えるよう なあたたかい図書室を目指してこれからも頑張ります。

■第48回目  岩鬼 くみ子 さん(小山町立図書館)
 図書館は、文化的な面が大きな印象を与え、また、教育的な機能も十分持ち 合わせている機関でもあります。私は、この生涯学習課図書館に勤務して4年、 これまでの教育経験を生かして、この機能を発揮させることに努めてきました。 具体的には、子育て支援新規事業「図書館ブックスタート」「家庭・地域こど も文庫開設」、「図書館ファンクラブ」等があげられます。
 家庭の教育力の低下、母親の育児ノイローゼといった社会問題、子どもを取 り巻く環境は、益々深刻化しています。『赤ちゃんのことばと心を、絵本を介 して育むブックスタート』を受けたお母さんが笑顔一杯に「ありがとうござい ました」と帰っていく姿に、きっとこの親子さんのこれからは幸せ感一杯の日 常であると信じる気持ちになります。
 新聞・テレビなど連日のように起こる事件に、「心の教育」が大切に思う昨 今です。子どもと父母、地域社会との人間関係を深めることが大切です。教育 の基本は人間形成です。私は、図書館で行われている「絵本の読み聞かせ」に 対しても、技術だけでなく、この大切な幼児期・学童期に携わる人間として、 自己の人間性を磨くことも大切と痛感しているところです。

■第49回目  内山 淳子 さん(東伊豆町立図書館)
 あさのあつこ著「バッテリー」、感動しました。小説では『ひたむきな生き方』 の描写に、映画では子どもたちの『目の輝き』にです。
 ふとした拍子にインドネシアの子どもたちの目の輝きが脳裏に蘇ることがありま す。15年以上前に現地で出会った子どもたちのことなのに・・・青年スポーツ省 の常連の子どもたちは、美味しい物が食べたい!もっと物が欲しい!家族を幸せに したい!の延長線上に読書があり、未来への単純な希望が、あの目の輝きに反映さ れていたのかもしれません。
 15年前に地域の皆の願いで誕生した東伊豆町立図書館は、学校が近くにあるの で、放課後はどっと子どもの波が押し寄せてきます。本には目もくれず、今日あっ たこと、今悩んでいることを話すため?に来る子もいます。大抵その悩みは複雑で、 すぐには解決できない類の難問で、子どもも大変だなあと思います。
 ただその子は話に耳を傾けて親身に寄り添ってくれる人を求めているのかもと感 じつつ「そうなの・・・」と相槌を打って、司書の私はすかさず「この本どう?」 「こんなの興味ない?」と何冊か本を紹介します。その本をきっかけにその子の目 が輝けば、心の中でガッツポーズ!です。

■第50回目  山田 恵(エミ)さん(東伊豆町立図書館)
 現在、図書館司書目指して勉強中です。
 仕事・家事・育児・勉強といろいろ悩み何度も挫折しそうになりましたが、 それも3月末に受けた試験がOKならば“資格取得!”というところまできて います。
 でも、すでにとりかかりから2年が過ぎようとしているので、これで終わら せたい・・・最後でコケなければ良いのですが。
 今回なんといっても周りの人たち(家族・同僚)が、快く協力してくれたの で、それが励みとなっていました。その人達のためにもなんとか合格していて ほしい!今は運を天に任せるしかないといった状況です。
 私の子ども時代には近くに図書館はありませんでした。今は小さいながらも 素敵な図書館があります。そんな図書館で仕事をしていて思ったことは、図書 館を知らないなんて損していたなあということです。こんなに楽しい場所、昔 の私に教えてあげたい!それは無理ですが、一人でも多くの人、特に子どもた ちに図書館の楽しさを伝えられたらと思っています。司書になるぞ!

※後日、山田さんより“合格しました!!”とのうれしい報告をいただきました。  おめでとうございます。