「こんな図書館にしたい」「私の出会った図書館員」「心に残るこの1冊」 など、図書館員の“おもい”をリレー形式で紹介していきます。

■第31回目  溝口 純子さん(御前崎市立図書館)
   図書館勤務も今年で8年目になります。配属前に描いていた「本に囲まれて 楽しそう」≒ラクそう、という図書館像も今や彼方。利用者の皆様のご要望に お応えする難しさ、本の重さ、思った以上に大変な職場でした。ときどきこう した図書館の対外的なイメージとのギャップを訴えたくなります。特に、同じ 市役所職員に言われた日には……。もっと図書館業務をアピールしていかなけ ればならないと改めて感じます。
ですが一方で、職員や館内があまり慌しく張り詰めた雰囲気では、利用者の 皆様にとっては居心地が悪くなってしまうのかも、とも思います。白鳥のよう に(?)「見た目は優雅に、足元はバタバタと懸命に」が理想的なのかもしれ ません。
 利用者の皆様には、いつまでも「本に囲まれて楽しそう」な図書館でありた いと願っています。

■第32回目  岩澤 聖子さん(吉田町立図書館)
 吉田町に図書館が開館して、今年の夏で7年がたとうとしています。 図書館に勤めはじめて、通算で5年半。子どもの頃に読んだ本と再会し、「こ の本覚えてる!」と思うことがたくさんありました。しかし、「たくさん本を 読みなさい。」と言われ、ただ読まされていた中学校時代に読んだ本は、いく ら思い出そうとしてもほとんど覚えていないものです。ですから、中高生の読 書量が減っても、わが身を振り返り、決して読書量を増やすことだけを強要せ ず、自分からこの本を読んでみたいと手を伸ばしてもらえるような読書案内が できたらいいなぁと思っています。
 そして、図書館に来ていた子どもたちがいつか大人になったときに、「この 本覚えてる!」と言って、自分が大好きだった本と再会できるように、すてき な本をたくさん紹介していけたら…と思います。

■第33回目  稲葉 芳之さん(富士宮市立中央図書館)
 私の担当はレファレンス室です。この部屋には私ともう一人、社会教育指導 員の方がいます。その方は教員を退職された後に、図書館にこられました。レ ファレンス室には富士山コーナーなどもあり、小・中学生も調べ学習でよく利 用します。長年子どもたちと向き合ってきた先生ですから、子どもの扱いがと てもうまいのです。子どもから質問されると、そのことの何について調べたい のか、ここに来るまでに何を調べてきたのか、どういったものにそのことが書 かれているだろうかを子どもたちに考えさせます。「この質問がきたら、この 資料を紹介する」といった迅速な情報提供は、子どもに対しては必ずしもよい のではなく、調べる過程が大切であるということ。そう図書館は教育施設なの です。私にとっても勉強の日々が続きます。

■第34回目  岩田 里美さん(裾野市立鈴木図書館)
 図書館で働きはじめてようやく2年目になります。ちょっとは進歩したかな と思いながらも、まだまだかなというところが多々あります。
 「外から見るのと実際に働くのでは違うぞ。」と何度も仰っていた司書過程 を担当していた教授の言葉通り、理想と現実は思いっきり違う、と実感しまし た。
 貸出・返却作業はもちろん本や雑誌の登録・装備。利用者の質問への対応な ど。最初のうちは無我夢中で働き、覚えていくのがやっとでした。利用者の方 をお待たせすることもかなりあり、申し訳ないと思うばかり。それでも喜んで いただけるとお手伝いできてよかったと思います。
 友人に言わせると、私が図書館で働いているのは私らしく笑える、と言われ ます。理由は……聞く気にもなれない。私の読書好きはもう昔からのことで、 私=本好きという公式が成り立っているらしく、初めて図書館に勤めていると 言ったときは、皆が皆一様に私らしいと言われ、喜んでいいのか悪いのか複雑 な気持ちになったりもします。
 亀の歩みかなにかは分かりませんが、少しでも進歩していければいいなと思 っています。

■第35回目  池谷 岩夫さん(御殿場市立図書館)
 当図書館には、明治初期から昭和29年までの市制施行以前の旧町村役場文 書が大量に保管されている。これは当市の歴史資料として大変貴重なものであ る。ところが、こうした昭和20年代以前の役場文書が残っているのは、全国 的にみても数少ないようである。多くは、合併あるいは新市に移行する時点で 処分してしまったようだ。ここ数年の大合併により、全国にたくさんの新市が 誕生した。旧自治体の歴史を記録する重要な文書は保存されたであろうか、た いへん気になるところである。
 歴史上でも大変動期、例えば明治維新では、廃仏毀釈により今日では重要文 化財級の仏教美術の多くが破壊され、なかには二束三文で外国に売り飛ばされ たものもある。そして、太平洋戦争後には、日本の多くの文化財が海外に流出 したと聞く。同じ敗戦国でもドイツ、ドレスデンでは空爆で破壊された由緒あ る建造物を欠けらにいたるまで集め、以前と同様の姿に復元したという話には、 西欧諸国の自国の文化に対する強烈な愛着と誇りを感じる。西欧諸国の歴史観 からすれば、市同士の合併があったからといって、決して役場文書を燃やすよ うなことはしないであろう。
 ところで、最近指定管理者制度の図書館への導入が話題になっているが、地 域の文化の中心であるべき図書館を指定管理者にゆだねてしまおうとする動き は、自国の文化の喪失につながる危険があるのではないか心配である。

■第36回目  岩崎 良一さん(富士宮市立中央図書館)
 最近、アメリカ・カナダの図書館を視察する機会を得た。旅慣れていない上 に外国に行くと言うことで多少の不安があったが、同行する皆さんのおかげで 図書館を見ていくうちにその不安は解消され、新鮮で貴重な体験をした。
 シアトル市の中央図書館と分館3館、シアトル大学図書館、シアトル市の近 くの島にあるベインブリッジ公共図書館、ワシントン州立盲人図書館、バンク ーバー公共図書館と合計7館を3日間の日程で視察した。
 シアトルとバンクーバーの中央図書館は、規模、資料数、建築の工夫、利用 者の導き方、インターネット・パソコン・データベースの整備状況等その壮大 さに圧倒された。
 しかし、もっとも印象的であったのはベインブリッジ公共図書館(分館)であ った。人件費・運営管理費等はキットサップ郡の予算で運営されているが、そ の土地と建物は地域の住民が提供し、館内の設備等に寄付者の名前がいたると ころに張り出されている。滞在時間は2時間ほどであったが、親切な館長さん と手作りの図書館は暖かみがあり、アットホームな雰囲気は気持ちをほっとさ せてくれ、この地域の住民を羨ましく思った。

■第37回目  石黒 教雄さん(袋井市立浅羽図書館長)
 この一年ほど、新聞の地方版に地元の記事、特に明るい記事があると喜んで 切り抜いています。切り抜いた記事は、図書館で台紙に貼って郷土資料コーナ ーのファイルに綴ったり、カウンター近くの掲示板に貼ったりします。他の職 員も自宅から新聞を持参して協力してくれるので、郷土資料コーナーには4冊 目のファイルが置かれました。掲示板には、特に大きな記事や、地元の子ども の活動が取り上げられた記事を掲示しています。万葉歌が風景写真と合わせて 紹介された時には、お客様の問い合わせに応えて、撮影位置を探し出し、位置 図を添えて掲示しました。連載された小学生の詩は、まとめて台紙に貼りまし た。今が盛りとなっているコスモス畑の紹介記事は、現地への案内図を添えて 掲示しています。
 以前は、新聞記事を見ても滅多に切り取る事はなかったのですが、カッター ナイフを手に持って新聞を見ると記憶回路へも強く働きかけるようです。自費 出版の著者が来館した時には、お祝いの言葉も忘れずに伝える事が出来ました。

■第38回目  長島 雄一郎さん(磐田市立中央図書館)
 図書館職員として12年目を迎えました。
 レファレンスを担当していますがベテランといえども不得意分野があって、どこか ら手をつけていいかわからないことが多々あります。 そんなときには他の職員に知恵を求めます。図書館員としての経験年数にかかわら ずその分野に強そうな人にヒントを求めます。場合によっては図書館員以外の人に 求めることもあります。すぐに解答が得られることも少なくありません。
 自分の好きなことを3年間一生懸命やれば、まわりからその道のエキスパートと呼 ばれるようになるという話を聞いたことがあります。自分にあてはめてみると、受 験勉強で得た知識の大半は忘れてしまいましたが、好きで学んだこと、例えば高校 時代の部活で得た天文の知識や大学で卒論のための研究のことは今でも覚えていま すし、それがレファレンスに役立つこともたまにあります。 誰がどんな趣味をもっているか、どんな分野が得意かを把握しておくことも大切な ことだと思っています。

■第39回目  田中 邦子さん(静岡市立中央図書館)
 子どもの頃から読書が好きでした。「三度の食事より・・・」という言い方 がありますが、まさにその通りで、食事の時間になっても物語が終わらないう ちは一向に構わず読み続け、何度こっぴどく怒られたか。本を扱う仕事につき、 大好きなことを生活の糧にできているのだから、幸せな人生だなあと自分でも 思います。が、一児の母となると、なかなか思うように読書の時間はとれませ ん。夜、あれこれをかたづけてやっといそいそと本を開いた途端、「これ読ん で〜」とお気に入りの本を持って来られてしまうのです。図書館員としても、 母としても、読書好きな子になってくれるのは嬉しい。嬉しいけど、母は今自 分の本を読みたいのよ。仕事では「お子さんが読んで欲しがったらぜひ何冊で も読んであげてください。」な〜んて言っているのですが。カウンターで応対 をしていると、一枚のカードを前にお子さんと親御さんでどっちが何冊借りる か、なんてもめていることを時々見かけます。そのたびに「ああここにも仲間 が・・・」なんて、ついにやにやしてしまうのでした。
 
■第40回目  鈴木 美穂さん(静岡市立御幸町図書館)
 毎年11月上旬、静岡市では大道芸ワールドカップが開催され、今年も大盛 況でした。期間中、市内の各所でパフォーマーによる大道芸が繰り広げられ、 何重もの人垣から歓声があがります。当図書館が入っているビルの入口付近も パフォーマンスポイントにあたり、期間中は図書館の中にまで声や音楽が響い てきます。閲覧中のお客様にはご不快かと思いますが、年に一度のお祭ですか ら、この時ばかりは青空の下で生の大道芸を楽しんでみてもいいのではないで しょうか。当日は市外の方なのか、「静岡のガイドブックはないか」とお尋ね になる方が何人かいらっしゃいまして、わずかでも観光情報の提供という形で 図書館がお役に立てたようで嬉しかったです。