「こんな図書館にしたい」「私の出会った図書館員」「心に残るこの1冊」 など、図書館員の“おもい”をリレー形式で紹介していきます。

■第1回 山本佳世さん(金谷町立金谷図書館)
 金谷町の図書館が、やっとオープンしました。建設委員会、選書委員会の方 方はもちろん、配架を手伝いに来てくださった方、大型絵本用の袋を作ってく ださった方、生け花を飾りに来てくださった方などなど、みなさんに助けても らいながらのオープンでした。本当に町民全ての方の図書館なんだなぁ、と感 じます。もっと大勢の方に愛される図書館を目指して、職員一同がんばってい きます。よろしくお願いします。

■第2回 長谷川陽子さん(佐久間町立図書館)
「図書館の思い出」って、いい響きですね。  私の通った小学校には、二つの図書室がありました。ひとつは学校の図書室、 もうひとつは、校長室です。校長室には本棚があり、そこでも本を借りること ができました。学校図書室を"自分勝手"に卒業した子供達が、校長室へ行くと いう感じでした。私もその一人で、職員室から様子を伺い部屋を覗くと、校長 先生は「いらっしゃい」と迎えてくれました。本棚には、子供向けもあれば大 人向けの本もあって、自分なりに面白そうな本を見つけては借りていました。 何よりも接客用のソファーに座って読書ができるので、私はよく通いました。 校長先生とは「これおすすめ」とか「今日はどうだった」とか、そういう話も しましたが、大半はそっとしておいてくれたように思います。その静寂の心地 よさを思い出します。  校長室は、私の中で「図書館の思い出」として大切な場所です。

■第3回 杉山芳生さん(長泉町民図書館)
 図書館ってどんなとこ? 大人の方の答えはだいたい想像がつきますが、子 どもたちの回答を想像できますか?  当館の児童室には、子どもが子どもに対しておすすめの本を紹介するコーナ ーがあります。用紙におすすめ理由を書いて投書します。大人が子どもに読ま せたい・読んでほしい本の紹介をする本はいくらでもあります。しかし、この コーナーは子ども自身がおもしろいと思った本を他の子に紹介するのです。  子どもの書いた紹介文(現字)で紹介しているので多少読みにくいのですが 何が楽しかったのかが書かれています。このコーナーのおすすめの本はいつも 貸出中ばかり、とても大人気でなかなか借りることができません。  さて、子どもたちは図書館をどのように思っているのでしょうか?  図書館って“どんなとこ?”の質問に“楽しいとこ”と返事が返ってくるよ うな図書館を考えていきたいと思います。

■第4回 新生宏子さん(伊豆の国市立中央図書館)
  伊豆の国市が誕生して1ヵ月半が経ちました。新しいスタート…という感慨に 浸る暇もないまま、桜が散り、ツツジと新緑を横目に見ながら、右往左往する毎 日でした。町から市になり規模が拡がること。中央館・分館という新しい体制。 これまで経験したことのないことばかりで、不安な点を挙げればきりがありませ ん。とにかく、まずは今までどおりの図書館サービスを利用者の皆様に提供でき ることを第一に考えよう。それが、3月頃の私の思いでした。  新体制が実際に動き出してみると、なんて細かいことで判断を迷うことでしょ う。それでも、中央・韮山・長岡の3館のカウンター・サービスが、毎日混乱な く運営できるのは、臨時・非常勤職員の皆さんのおかげです。そして、以前と変 わらず来館してくださる利用者の皆様の為に、一刻も早く新体制の図書館運営を 軌道に乗せられるよう、力を尽くしたいと思います。

■第5回 杉本高志さん(浜松市立中央図書館)
浜松市は7月に12市町村が合併し,新しい浜松市になります。  図書館の数も現在の10館から21館1分室になります。また,現在の城北 図書館は,老朽化及び耐震性にも問題があるため近隣地へ移転改築します。オ ープンは,平成18年10月の予定です。  この図書館は,自動車文庫の基地,声のライブラリーの活動拠点とするほか, 視聴覚ライブラリーをはじめビジネス支援図書コーナーの設置,アナログレコ ードによるレコードコンサートの開催,IT(インターネット設備,電子資料) や増大する図書資料の保管に対応するなど中央図書館機能を補完するとともに, ユニバーサルデザインに配慮した施設となります。多くの方に利用していただ くには,図書館サービスの質の向上が急務であり,図書館職員の絶え間ない努 力が必要であると思います。

■第6回 鈴木美鈴さん(下田市立図書館)
 お金がなくって何ができるだろう?・・・。人手がなくって何ができるだろう?・・・。 場所が狭くて何ができるだろう?・・・。でも、はっきりいえること、やる気がな ければ何もできない。でも、やる気があれば、何かができる。みんなのやる気は、 人の輪を作り、大きな渦となって、新しいうねりを起こすものである。
 現在、図書館は、本を貸し出すだけのところという旧来の認識から、その仕事 は定型的、反復的、単純な業務とみなされ、外部委託が検討されている。
 しかし、皆さんご存知のとおり図書館はそれだけのところではない。情報の拠 点として、地域文化の中心として、地域の課題解決に積極的にとりくむことまで も担える所である。しかし、大上段に構えて、理屈やお金のことばかりいっても どうにも成らない。今、自分のできることを精一杯やるしかない。
 私は思う。財政難の中、少ない予算、ないないづくしを、逆にチャンスにかえ て、下田の身の丈にあった、手づくりの“みんなで創る環境にやさしい活気ある 図書館”にできないだろうかと。その鍵は、やはり、やる気と、人づくりにある。 へこたれてはいられない。きっと新しい風は、中心からではなく周辺から吹くと 信じて。

■第7回 石井真絹さん(伊東市立伊東図書館)
 音無の森近く、市内中心部を流れる松川とその支流である本郷川の合流する地 点に伊東市立伊東図書館はあります。毎年、6月過ぎると鮎釣りの竿さす人々で 川は賑わいます。昨秋の相次ぐ台風災害の影響もあってか、今年は例年よりも釣 果が少なめとのことです。
このように読書に疲れた目を休める為にはすばらしい環境にある図書館ではあ りますが、悩みも数多くあります。
 場所が手狭で蔵書数が少なく、中でも蔵書全体の開架の占める率の低さから、 尚更「本がない」という印象を持たれるのも否めません。その他、OPACの インターネット公開や「おうだんくん」への参加等、課題は山積み状態ですが、 日々利用者の要望に応えるべく職員一同頑張っています。
 他館の皆様、相互貸借でお世話になるばかりで心苦しいのですが、早く「お うだんくん」の参加が実現するようにしていきたいと思います。

■第8回 高橋三千丈さん(熱海市立図書館)
 図書館で3年3ヶ月働きました。風通しが悪く、空調がほとんど効かない事務 室と閲覧室。夏は日々暑さに耐えながらの仕事。利用者の方からも暑いという 苦情が多数。「夏は涼しくて冬は暖かい」図書館はそんな快適空間だと思って いましたが。建物の老朽化に加え、窮屈な書架。財政状況が厳しいこのご時世 に、とても新図書館建設とはいかず…残念。誰もが足を運びたくなる図書館に。 一市民としてそれが今の願いです。
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― 図書館員 −思っていたより大変な仕事です。一番の市民サービスの場で ある図書館。利用者の様々な要望に応えなければなりません。そんな図書館で 私は尊敬すべき図書館員と仕事を共にしました。いつも穏やかでやさしく市民 に接するかわいい大仏のようなおじさん。30年近い図書館勤務の経験を生かし、 どんな要望でも的確に応えるおねえさん。年を感じさせない強烈な明るさと豊 富なレファレンス知識を武器に、明るく市民に応えるおねえさん。他にもたく さんのすばらしい図書館員に出会いました。これからは図書館利用者としてみ なさんの頑張りを陰で監視しています。

■第9回 志村典子さん(三島市立図書館)
 YA(ヤングアダルト)という言葉をご存知ですか?「若いおとな」と言う意味 で、図書館ではティーンズ、主に中学・高校生を指します。三島市立図書館では、 子どもから大人へ成長途中の年代ということで、児童書と一般書のちょうど中間 の場所にYA向けの本棚をもうけています。
 さて、夏休みになるとYA向けの本の貸出が大変増えます。入口正面の目に付き やすい位置にあることも手伝って、夏休み前に本でいっぱいだった棚が、見事に ガラガラになります。読書離れの傾向があるといわれている年代ですが、時間と 心の余裕、そして本が周りにあれば実は「読書離れ」なんていう言葉は出てこな いのかもしれません。
 YAコーナーの本が、大人の本への橋渡しに、そしてお気に入りの本に出会うき っかけになってくれたらいいな、と願いながら選書している毎日です。

■第10回 豊田ますえさん(袋井市立図書館)
 リレーエッセイ第10回 の記念すべき回ですが、私が図書館員になろうと 決めた時のことをお話しします。
 高校生の頃、進路を決めねばならない時期に来ていました。どんな勉強をし、 どういう社会人になるか、自分はどんな仕事をしていきたいのか、当時は悩ん でいました。そんな中、自宅のお風呂に入っている時、私の出身地の公共図書 館での出来事を思い出しました。当時はほとんど図書館を利用したこともなく、 たまたま学校の宿題の資料を探しに行ったのですが、そこで図書館の「働き」 (職員・サービス・資料)に出会ったのでした。人、そして本との出会いがあ ってこの仕事に導かれ、今の私が形作られてきたように思います。
 この仕事をはじめて十数年経ちますが、当時の自分が受けた感銘を今の仕事 に反映できているか、これを書きながら自問自答しています。